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  • 2007.04.08 Sunday
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昨年よりも難易度はかなり高い気が 〜順位予想

さて全球団が終わったところで、
恐らく野球ファンならば誰もが一度はやってみるであろう順位予想に入っていく。



<パリーグ>


大型補強を見せたソフトバンクが第一の優勝候補。小久保・多村と故障離脱が懸念される新戦力は今の所順調。新外国人アダム・ブキャナンが打線を厚く出来れば松中の負担も減り良い流れになるだろう。投手は相変わらず強力で、ルーキー大隣こそ故障で出遅れ必至だが5枚はほぼ磐石。リリーフも新外国人ニコースキーが層を厚くする。

このソフトバンクに対抗する球団は何処か。
1番手は前年日本一の日本ハム。打線のスケールダウンは痛いが、稲葉・セギノールの中心軸がしっかり立てば昨年同様の小技路線で大きな不安は無い。グリーン・金子洋と楽しみな新戦力が現れていることだし。何より投手はライバル・ソフトバンクに強い選手が揃っており、2位に終わってもプレーオフで引っ繰り返す、という展開に持っていければ万々歳。ダルビッシュ・八木に刺激を与える存在が現れればソフトバンクと双璧なす先発陣が形成可能。

前年2位の西武だが、松坂の移籍後もカブレラの負傷などパッとしないニュースが続く。それでも戦力を纏めるのが上手い球団だから大崩れは無いと予想する。懸案の投手陣ではルーキー岸の実戦力の無さが気に掛かり、先発が期待される外国人も4人も居ては起用する方も難しいだろう。反面僕が先発以上に不安視するリリーフ陣は岩崎・山本歩ら新星が現れており何とか埋まりそうだ。この勇気ある抜擢意欲が先発陣にも欲しい。

今季はWBCも行われず今の所順調なロッテ。ズレータという大砲が加わったものの彼一人だけでは苦労する。ベニーが04年ぐらいの成績を残せれば良いのだが。TSUYOSHI(西岡)もそろそろ3割打ちたい年数だし、視力回復手術を敢行したサブローもセンター定着が必須な人材で相変わらず野手は苦しそうだ。とにかく野手が変わらなければ昨年同様質は高いが物量不足の投手陣に負担が掛かり低迷する事だろう。

楽天は当たり前といえば当たり前だが上昇機運しか感じないチームであり、今季は最下位脱出は間違いないと思われる。更なる浮上のためには田中もそうだが個人的に挙げたいキーマンはキャッチャー嶋。ノムさんの眼に叶うことが出来たのか色々と戦略を指南されており、一気の正捕手定着・投手陣安定化に期待大。打線は量・質ともに他球団より落ち気味だがそれでも昨年中々だった機動力をさらに充実させれば向上の可能性は十分。

球団名「バファローズ」廃止の見通しを立てた事でますます見放された感のあるオリックス。当然清原・ローズ・ラロッカというロートル大砲に頼っていたら浮上の芽は無いのだが、期待の若手という位置も人材不足気味だから難しい。投手は割かし安定している反面爆発力無く、昨年崩れた勝利の方程式も未だ見通しが立っていない。

以上のことから順位を予想すると、ソフトバンクはシーズン1位になれてもクライマックスシリーズで敗れるのではないかと思う。確かに強力なのだが04年以降毎年左投手に弱く二級線のピッチャー相手でも苦戦する試合が多々あった(西武・山崎、近鉄・山本とか)。昨年も日ハムの八木・武田勝相手にからっきしでそこにダルビッシュも加わってくるのだからかなり苦しく、その他では西武・グラマンや楽天・有銘にも弱さを発揮した。小久保・多村の獲得はその梃入れという思想もあるだろうが、個々の対左成績で見ると決して悪くなく「良く解らないが負ける」という現象だから直すのは容易ではなく、この相性の悪さが改善されない限りレギュラーシーズン1位も厳しいと推測する。
といっても先発5本柱は強力で、日ハムがソフトバンクを上回るには後一人安定した先発が欲しい。金村の復調は必須項目だが、登板過多だったリリーフ陣も不安要素があるので負担を減らしたい所だし。
ソフトバンク・日ハムの一騎打ち、3位は西武・ロッテ・楽天の争いが予想される。楽天の評価は過大かもしれないがそれでも戦力の伸びは他2球団を凌駕してさえいるからどうしても期待してしまう。カブレラ抜きでも戦える野手な半面手薄な投手陣の西武と、クオリティ高い投手陣を誇るが野手のモロさが改善しきれていないロッテ。針の揺れは微妙だが、新星抜擢の機運がある投手陣の西武に軍配が上がるか。いずれにせよ楽天の上昇度によって順位が左右されそうだ。
オリックスは周知の通り、かなり苦しい戦いが予想される。新外国人アレン・カーターの2人を中心に全体の底上げを図っていく事が今後の課題だろう。



優勝 日本ハム
2位 ソフトバンク
3位 西武
4位 楽天
5位 ロッテ
6位 オリックス




<セリーグ>


優勝争いの中核となるのはやはり中日だろう。投手陣は先発も中継ぎも物量・質ともに豊富で、敢えて言えば絶対的セットアッパーの不足ぐらい。野手のレギュラー陣の高齢化は気がかりな所だが、若返りという課題は他球団も同様に突きつけられておりそれを解決できる空気とはいっていないので相対的に見て中日の有利さは変わらない。

この中日の対抗馬となると、正直難しい。
05年に中日連覇を食い止めた実績のある阪神が今季も第一候補となる。だが野手では中日以上に主力選手が高齢化しているのがネックであり鳥谷・濱中がクリーンアップに定着するようでなければキツイ。これは05年シーズン前にも同じ事を考えたのだが予想を裏切られて優勝した阪神。だが連覇チームが出ないのと同様2度も同じことが続くとは考えづらいし、投手陣の未完成ぶりも足を引っ張ることとなりそうだ。

毎年高評価が予想される巨人だが、補強により陣容が安定しないのがこの球団の悲しき性。そのバランスの悪さは本編でたっぷり語ったので記述しないが、最も肝心な要素である「戦力を纏める能力」が原の中から消え失せているのではと感じてしまうのが低評価せざるを得ない最大要因。「野球をやるのは選手だから、選手の自主性が必要」とは良く聞く言葉だが、その「野球をやる選手」に進むべき道を示した上で自主性を煽らなければ意味が無い。ヘッドコーチに伊原が加わったものの厳しさだけでは選手達が変わるとは思えない。

ある意味昨年が優勝できる最大のチャンスだったかもしれないヤクルト。打線は明らかに戦力低下が目立ち、ツギハギで乗り切るという魂胆が見え見えなのも痛い。投手も高津・木田の両ベテランが踏ん張れなかったら総崩れになるのが明らかな陣容で、今季は戦力充填に費やした方が良いかもしれない。

僕が大穴と予想しているのは広島であるが、上記3球団が戦力低下の不安を持ち併せて戦わなければならないのに対して見通しはかなり明るいと思われる。何より昨年中日と互角の戦いを演じているように王者へのコンプレックスが無く、黒田以外の先発試合で勝率が上がれば確実に前年より良い戦いが出来るというのが強み。ただしプレーオフを勝ち抜くには昨年ビジターで2勝しか出来なかった阪神より上になる事が絶対条件だが。

横浜は巨人から工藤・仁志という大ベテランを獲得して意識改革を図る。門倉や佐伯など責任を果たせない選手に苦しめられる結果となった昨年だが、この両者が加わる事によって粒揃いの若手の殻が破れる事が望まれる。特に工藤という生きた良い見本を得た投手陣のスケールアップに期待である。


そんな事で順位を予想してみる…
難しいのはやはり巨人であり、このチームの事はここ数年は「○○なら優勝争い、そうでないならBクラス」なんて仮説を立てながら予想している。(例:05年=清原起用に拘らなければ、06年=小坂を上手く活かせば…)だが今季はその仮説すら思い浮かばない。強いて挙げれば姜・金刃の若手先発を定着させる事だろうか。それにはバック(守備)の安定化など課題は山積みだろうし、一遍に解決できるとは思えない。
もう一つキャスティングボードを握りそうな球団が広島。戦力は巨人に及ばないものの反対にブラウンの指導・起用方針に一過性があるという強みがあり、この組織力の強さで順位を上げる事に期待である。
投手陣の駒が豊富ながら決定力が無いのはヤクルトも同じだが、未完成の選手揃いの広島や横浜に対し、ヤクルト投手陣の問題は既にスペックの底が見えている選手ばかりな点である。大器の新人・増渕が早くもローテーション候補に挙がっているが、それだけ突き上げられる若手が居ないという事でもある。Aクラスはおろか、一気に最下位へ沈む可能性も低くない。野村→若松と続いたやりくり上手の監督の歴史も古田で途切れそうだし、隠れた名参謀・渡辺コーチももう居ないし。
金本や矢野が衰えたら崩れてしまいそうな阪神だが、あと1年は持ちそうな気がする。投手陣に一抹の不安があるが、近年のドラフトにより勢揃いした未完の選手が数人殻を破って陣容を保つと予想する。何より下位球団には雰囲気で圧倒できる甲子園をホーム球場に持っている事だし。



優勝 中日
2位 阪神
3位 広島
4位 巨人
5位 横浜
6位 ヤクルト





以上。

とはいっても昨年の僕の的中率は、
4/1233%と見事な低さであるが。
いい意味で予想を裏切るような球団が現れる事に期待したい。

ベテラン・若手の融合の成果は 〜横浜

主な戦力表



97年にチームを2位に押し上げた大矢監督が復帰。野手で目立つのがコンバート策で、ポジションが一定しなかった内川・吉村は果たしてライト・ファーストにそれぞれ定着できるのだろうか?相変わらず控えが薄いのでファームからの底上げも必須事項。
逆に投手陣は期待できる素材がゴロゴロ居る。そこに工藤という選手の手本となり得る大ベテランが加入し、殻を破って主力にのし上がる選手が多数現れ一気に強化される可能性も否定できない。野手同様思い切った配置転換も競争を煽る一策となりそうで、今季の投手陣は面白い。

<守備力チェック>

捕=相川はインサイドワークの面でもう一ひねり欲しい
一=吉村が守る事となりそうだが熟練されていないため不安
二=守備を考えれば仁志。藤田も上手いのだが仁志から妙を学びもう一皮
三=村田の居場所。入団当初不安視された守備もかなり様になってきた
遊=石井はいい加減衰えが心配。代替要員も居ないし
左=今季こそ古木は不安を無くし定着して欲しい
中=金城か小池か。金城の肩は健在だが守備範囲の面で衰えていないか
右=内川のコンバートで熾烈な争いとなるか、それともすんなり定着か

<野手陣>

98年の優勝メンバーに次々と去られていったものの、期待の若手は着実に成長している。だがその若手を束ねる段階で下手を踏んだというのが牛島前監督の印象。監督が短期間でコロコロと変わればそれだけチーム方針も変わりやすいというのがプロ野球団の性で、山下前々監督の自由奔放な攻撃野球→牛島の典型的なコツコツ野球と正反対だったこの4年間。おかげで順調に伸びていた内川・古木が割を喰う結果となり見事に成長はストップ。故障者の多さもあり昨年は出番こそ増えたが、内川が.286の4本塁打、古木が.252の10本塁打と物足りなく、新星・吉村にあっさりと抜かされる形となってしまった。
思えば山下の前でも放任野球の権藤→管理野球の森という正反対のタイプの監督を招聘して失敗している。いい加減一人の監督にチームを長期に渡って託すという思考も持ってもらいたいものだが、普段でも散々語っているのでこの辺にしておく。
多村をトレードに出した事が逆に陣容を安定させる結果となりそうだ。いくら中心選手といってもあれだけ下らない事象で故障されてはチーム構想が描きづらいものだし、現有戦力の底上げで穴を埋める腹積もりというのが対象チーム・ソフトバンクと違って好感持てる。
その候補は当然上記で挙げた内川・古木で、両者とも外野でレギュラーを目指すとあって多村の穴埋めには最適。ただ両者守備に難があるのでセンターには守備型を持ってくるのが絶対条件だが。そういう意味では田中一の解雇は時期尚早だった気がする。牛島政権の際センターの優先度は多村>金城小池と思われがちだが、金城は意外にもセンターを小池に譲る場面が多く守備力が低下していないだろうか疑わしい。そうなると安心してセンターを任せられるのは小池ぐらいなものである。
一軍出場無しの05年からまさに「大ブレイク」という形容がピッタリな活躍をした吉村であるが、中心打者として期待するのは早すぎる。
内川 04年 .287 97安打17本塁打→05年 .274 64安打 5本塁打
古木 02年 .320 32安打 9本塁打→03年 .208 73安打22本塁打
村田 03年 .224 74安打25本塁打→04年 .242 79安打15本塁打
小池 05年 .243 98安打20本塁打→06年 .267 94安打 7本塁打

いずれもブレイクしかけた有望株の面々だが、いずれも翌年は苦労している事がお分かり頂けるだろう。これもブレイク年は相手側もそれほどチェックしていないからであり、マークに遭う翌年はそれに対応するのに一苦労という現象である。打率を上げた村田・小池にしても、シーズン序盤戦は打率2割前後に喘ぐ不振でレギュラーの座を逃していた。だから首脳陣は昨年以上の成績を望むのは酷というものであり、多少の不振になっても彼をベンチに下げて佐伯鈴木を使うと安易に考えず、粘り強く起用していき村田のような中心打者に仕立て上げて欲しい。
その村田であるが、昨年は6月からついに念願の4番打者に定着した。堅実な野球を求めてきた前監督・牛島だが村田はスタメンサードで起用。その言動も「考えてさえ打てれば4番なんだ」「9番の次の打順?次は無いんだ(不振で9番降格を命じた際に)」など数年後の大成を期待しての叱咤激励が目立った。そしてようやく中心打者として風格が漂うようになった昨年、目標としていた100打点を大幅に上回り、本塁打・打点では日本人選手内でリーグトップだった。生え抜き日本人選手の4番打者はこの村田以外では松中(ソフトバンク)・新井(広島)だけ(里崎(ロッテ)は暫定的措置だったので除外)で、20歳代となれば村田一人である。だからこそ村田にかかる期待は横浜球団だけでなくNPB全体の思いなのである。夢は大きく、第2回WBCの4番打者である。
攻撃陣ではこれら若手が中心になれば良い陣容となる。問題は守備陣だ。前述の通りレフトに古木、ライトに内川が入る事となればセンターには超一流の資質を持つ選手で無ければ両サイドをカバー出来ないだろうし、大矢監督案の「3番鈴木」が実現してレフトに入っても鈴木の守備はお世辞にも上手いといえないので不安は消えない。小池の強肩は魅力的だが3拍子揃ったルーキー下窪に任せても面白いだろうがさて。
二遊間も年齢的に不安が大きい。長らく不動のショートを守ってきた石井は守備範囲に若干衰えが見られ、時折気の抜けたジャッグルも目に付いた昨年。今季は2番に入り若手を裏から支える立場としても期待されるがどうか。その石井と二遊間コンビに入ると予想されるのが巨人から移籍してきた仁志というのもマイナス点。石井・仁志どちらも守備名人と呼ばれているだけ表面的には問題ないのだが、30歳代後半の選手が揃うリスクというものを考えるとどちらかに藤田を入れて成長に期待したい所である。これらの課題をクリアしないと、巷の評判とは裏腹に貧弱さが目立つ正捕手・相川の存在もありセンターラインは弱体化の一途を辿ってしまう事だろう。せめて多村の放出が痛くない、位のレベルを保って欲しい。
移籍の仁志に期待されるのは当然1番。年齢的にも.260ぐらい打てれば後はベテランの経験でチャンスメーカーの役割を果たせそうだが、残念ながら仁志はこの歳に及んでもブンブン振り回す勢いで勝負するタイプというのは変わらない。02年に22盗塁しながら成功率100%という脚力も既に無いので、仁志が1番というには3割ぐらい打たなければ務まらない。むしろパンチ力がありながら右打ちも上手く、脚力も備わっており何より若い内川が適任だと思うのだが。
後は控え選手の薄さはどうにかならないものか。種田・佐伯・鈴木のベテラン勢は代打で貴重な戦力となりそうだが、上昇のために必要なのが不安な守備を固める要員と不足する機動力を埋める代走要員。牛島は05年の規定到達者8人を見ても解るようにレギュラー陣の強さを重視してきたが、ベンチ入り16人を自由自在に使いこなせれば04年の中日のように打線が貧弱でも十分優勝は可能である。まして多村という中心選手が居なくなったのだからこの部門の強化は絶対条件。数年来投手重視の補強だった事もあり候補が挙げ辛いが、代走要員としては野中に期待したい。

<投手陣>

05年に規定到達+10勝投手を3人も出し、牛島ならではの投手陣改革が実を結びつつあったのが嘘のような昨年の体たらく。三浦・門倉・土肥の3本柱は、土肥が故障で離脱し、三浦は本調子とはいえないながらも責任感を胸に奮闘を続けたが運の悪さも手伝って8勝止まり。門倉は逆に運に恵まれ過ぎ脆弱さが目立ちながらも10勝を挙げたが責任感は無きに等しく、オフに揉めた挙句FA移籍。10勝ながら防御率・イニング数は三浦の足元にも及ばず、それなのに権利ばかりを求める無責任な選手の代替要員として、成績こそ衰えが目立つが責任感高い存在の工藤が加入してきた。
26年目となる今季故成績の面では多大な期待をするのは酷であるが、この獲得劇は横浜にとっては確実にプラスになる。これまでは最年長が川村(今季35歳)であり、期待の若手が揃っているとはいっても同族意識が強くそれが殻を破れない要因となっていた。だが工藤という大ベテランが加入したことで若手はその背中を見て練習法など参考にすべき点は沢山あるはずで、それにより技術を吸収・成長・飛躍していく選手が多数現れれば一気の躍進も有り得る面白いチーム編成となった。
例を挙げれば02年〜03年の近鉄で、01年優勝したもののチーム防御率は5点間近。特に規定到達者が前川ただ一人という先発陣の脆弱ぶりにメスを入れるべく、オリックスからFA宣言した加藤(現解説者)を獲得。加藤は入団会見で「これまでの経験を若手に伝えていきたい」と語り、自身は02年故障で0勝。だが岩隈をはじめ高木・宮本・山本ら若手が加藤の想いを受け継ぎ、崩壊していた近鉄投手陣が見事体勢を整えるのである。その後経営の悪化で頭数を整えられず04年に球団合併に至り本当の成果という点では日の目を見なかったが、大ベテランの加入というのは単なる補強とは一線をなした効果が期待できるのである。
確かに三浦以外信頼度の低い投手陣の顔ぶれが並ぶが、前年2〜5勝に留まった先発投手達の躍進に「工藤効果」が一役買って一気に進む可能性は高い。特に共に100イニング前後投げながら大幅負け越しという結果だった那須野・吉見は工藤と同じ左投手。那須野はセットポジションでの粘り、吉見は球を散らさず投球スタイルを絞り上げる事が課題だが大躍進に期待したい。
これにセットアッパーだった加藤・川村が先発争いに加わり、全員が横一線から激しくローテーション入りを目指して争われる。川村は00年まではバリバリの先発の一員であったがそれ以降今一つで04年からリリーフに回っていた投手。99年に17勝を挙げたのが最良のシーズンであったが、この年辺りまでは良いカーブ・チェンジアップで緩急を付け、球速以上に伸びがありホップするストレートをさらに生かす工夫が見られていた。だが翌年からヒジが下がり球威も低下、変化球もフォーク主体になるという逃げのピッチングが目立ち成績不振に。リリーフ転向でストレート・フォークのコンビネーションが生き復活を遂げたという経歴であるが、大矢はルーキーでいきなり1年間フルにローテ入りした97年の活躍が忘れられないのだろう。果たしてあの時の素晴らしい緩急を蘇らせる事が出来るだろうか。もう年数はかなり経ってしまっている。
手薄になったセットアッパーの1番手は当然木塚だが、新たな人材として推したいのがルーキー高崎である。馬力のあるフォームから繰り出されるストレートは150キロ越えで決め球の高速スライダー・フォークもキレがあり実戦的。社会人時代は先発も務めていたが、ストレートは速いもののフォーム的に問題があり(テークバックの取り方らしい)右打者のインコースを狙えないという弱点があるから短いイニングの方が向いている。当然木塚・高崎だけでは足りないのでパワーピッチャーの助っ人ホセロ・チアソン、中継ぎへと配置転換される事が濃厚な土肥、日ハムを戦力外となり出戻りの形となった横山らを加えて新たなスタッフを築き上げるのだろう。
左腕不足故高宮辺りもリリーフに回されそうだが、ストレートに速さが足りないうえシュート系のボールも無いから先発向きである。キレ命のストレートに球持ちの短いフォームを改善して伸びが加われば一気の一軍定着も可能だ。フォークが生命線である牛田もリリーフとしてはスピードが足りない。投球パターンの単調さとフォークの連投による握力の問題故リリーフが適任と早合点されそうだが、昨年好調時はフォークでカウントを取るピッチングも出来ておりまた8イニング投げた事もあるのでスタミナも十分。三浦タイプのも与四死球が多い割にはスピード不足で、先発リリーフどっちつかずの選手は実にスピード不足なタイプが多い。多村との交換要員である寺原もその内の一人となってしまう恐れがあり、150キロ台中盤を記録した高校時代とは裏腹に昨年はこじんまりとした印象であった。ストレートは149キロぐらいで変化球もカットボール中心の打たせるピッチングにシフトしたのではという印象で、三振も奪えず苦しいピッチングが目立っておりこのままだととにかく数が豊富な横浜投手陣の中で個性が埋没しかねない。課題は空振りの取れる変化球。「速さにはこだわらない」と本人は話しており、改善できるかに注目が集まる。

月見草、いざ最後の戦いへ 〜東北楽天

主な戦力表



新規入団3年目となりそろそろ結果が求められる。野村監督もそんなことを理解しているのか、はたまた年齢的にも自身限界と見たのかオフには「Aクラスにならなければ辞任」という宣言も飛び出す。相変わらず長距離は大砲任せなのだが「今季1年だけ」という視点でなら戦えなくも無い。果たして野村の最後の戦いぶりは如何に?
ようやく岩隈・一場の両輪が揃う投手陣。リリーフは野村特有の継投策で何とかなる事を証明しただけに課題となるのは先発陣。心配なのが昨年の高卒ドラフト1巡目・田中の無理使いで、煽り立てる周囲もそうだが「今年限り」の思いの下野村自身がはや抜擢しようと考えていたっておかしくない。田中は即戦力というより2年後のエースであり、仮に抜擢されてもその超人的な能力でこなすのだろうが、選手生命は縮まらないだろうかかなり不安。

<守備力チェック>

捕=藤井のリードが散々酷評された前年。思い切って嶋抜擢するか?
一=候補が3人も居ては指名代打にも当てはめ辛い。守備的ならリックだろうが…
二=高須がガッチリ固める。不安定なファーストもカバーしろ
三=フェルナンデスは指名代打に使いたいがそうなると山崎武・ウィットの一方が浮く
遊=打力が付けば文句無く塩川なのだが
左=ここにリックが入ればオーダーは組み易いが…現実的には牧田・関川か
中=守備範囲の面でも成長した鉄平。今季も活躍継続なるか
右=礒部に懸かっている期待は年々薄まっている印象。打力重視で選びたいが…

<野手陣>

フェルナンデスという固定4番打者がズシリと座り打線が強化された昨年。それでもチーム本塁打67本はかなり見劣りがする。外国人枠に捉われない和製スラッガーを立てたい所であるが大ベテラン・山崎武以外は台頭する気配すら無く、フロントにもオフに元横浜・ウィットを獲得するなど和製大砲を育てようという気概が見えてこないのが残念である。
野村監督がヤクルト時代猛威を振るったID野球は確かに小技・機動力重視の趣があったのだが、それはクリーンアップに池山・広澤という和製大砲が座っており、後はチャンスメーカーと守備陣を整えれば優勝できるというメンバー構成であった。広澤が巨人に移籍し池山が故障がちで平凡な打者に落ち着き、最終的に古田が4番になるという歪な陣容を残してヤクルトを去ったように野村はスラッガーを見い出す事に関しては上手とはいえず、また楽天にもその素材が決定的に不足しているから外国人を頼るしかないのであろう。野村が「今季限り」と表明しているように、最初から短期政権的思考で楽天監督に就任しており育成する時間的余裕が無いという要素もある。
そんな訳で現有戦力で得点力をアップさせる方法を編み出さなければならない今季の楽天。ウィットが加入したが、投手のインチェ・林恩宇の能力が高いので出来れば野2:投2という外国人枠にしたい。リック・フェルナンデスの上積みや山崎武の最後の踏ん張りに期待するのは簡単だが、そうはいきづらいという事は野村も承知しているだろう。礒部が復調すれば何とかなりそうだが、そうでない時に抜擢したいのが竜太郎。昨年はほとんどをファームで過ごしたがじっくり鍛えられた成果が終盤に表れ、28打数ながら打率.324をマークした。近鉄組の主力であった吉岡・憲史に元気が無いので、竜太郎も既に若手とはいえない年齢(今季31歳)だが勢いに期待して名前を入れた。3番が予定されるリックに勝負強さが足りないので、竜太郎には是非とも一気に殻を破って3番定着を期待したい。
そうなれば昨年のように3番に回される事も無く、鉄平・高須は腰を据えてチャンスメークに専念出来るようになる。ともに10盗塁に終わった機動力も成長が期待出来得点パターンが広がる事は間違い無いだろう。鉄平で心配なのがバッティング。昨年は高目の打率が異様に高く(4割越え)、低目の弱さを露呈したというように得意・苦手コースの違いが露骨であった。対応力を増さなければ実質2年目の今季は研究されたらスランプに陥るのは確実なので注意したい。
後現有戦力で期待したいのが山下か。毎年ファームで好成績を残すスラッガーだが一軍に上がると萎縮するのか気が逸るのかボロボロになりファームに帰ってくる、というプロ生活。しかし昨年は故障で38試合出場に留まったものの.278とようやく上昇機運に乗った。本塁打は0だが二塁打は8(全ヒット数の1/3)なので中距離への切り替えが出来たのだろう。ただ守備に難があるので使いづらいタイプ。38試合なのに9失策も犯しているから使うのには勇気が要る事だろう。一応セカンド・ファーストもこなせるらしいのだが…
沖原の不振(衰え?)で手薄となったショートは塩川が入る事となりそうだ。守備の動きに関しては沖原を既に上回っておりセンターラインには申し分ないのだが打撃がまだ弱い。大学時代は逆方向にも良い打球を飛ばすなど中距離打者としての資質は十分なだけに一層の精進を図って定着したい。その塩川と同期の西谷も一軍定着が期待される内野手。終盤に昇格を果たした昨年はサードが主だったが本来はセカンド。だがセカンドには高須が居るのでサード・ショートとどこでもこなす覚悟でシーズンに挑みたい。昨年魅せた巧打がシーズン通じて発揮できれば下位打線に人を得ないだけに上位への繋がりが生まれる。
懸案のキャッチャーはというと、昨ドラフトでは見事獲得に成功し厚みを増した。個人的には田中よりもこの嶋の指名が光ったという印象で、スローイングの素早さ、ヘッドワークの巧みさは野村が考える捕手像とほぼ合致。恐らくは藤井との併用になるだろうが、藤井はリードを散々野村に酷評されたにも拘らずオフは「僕のグッズを作って欲しい」などとズレた発言も見られた。今季も藤井が変わらなければいきなりの正捕手定着も不可能ではない。ピッチャーとコミュニケーションを密にしリードを構築して、来るべき時に備えたい。

<投手編>

岩隈が開幕から居る、これだけで昨年とは大違いの様相である。悩まされてきた右肩違和感の不安も既にほとんど無くなっており調整も万全。昨年はもちろん、移籍騒動などで満足に調整出来なかった05年の成績(9勝15敗)も恐らく上回るだろう。不安を挙げるとすれば2年間ソフトバンク戦に対して1試合も投げていない、という事。エースが強豪球団を避けるという姿勢では浮上など夢のまた夢である。
この岩隈と両輪を組む事が濃厚な一場。楽天球団自体同様勝負の3年目となり、着実にステップアップしているからこそコケるのは許されない。大学時代に華々しい実績を残し最速154キロのストレートで即戦力と期待されたが、実は技術的にかなりの問題を抱えた未完のピッチャーだった事が判明。05年はサンドバックのように打ち込まれる試合が続いたが、楽天首脳陣自体も未熟だったためか「経験を積ませるのが重要」と判断され100イニングは超え一応の面目を果たした。昨年は岩隈の故障で1年間ローテーション入り。相変わらず打ち込まれる試合も多々あったが成績は大幅に向上させた。大学時代はストレートの速さこそあったが速さだけの所謂「死に球」が多くあり、それが現在はヒジの使い方を修正しかなりの割合で良い球がいくようになった。これも首脳陣の指導が仰げない中、自身血がにじむ想いで鍛錬を重ねた結果であろう。それでも課題はまだ多い。変化球はスライダー・スローカーブ・カットボール・フォークと一通り揃っているもののキレが不足しているという印象。これも変化球とストレートで腕の振りが変わる癖は未だに改善されていないという裏付けで、野村は新たにシュート取得を命じているらしいがそれで一皮向けるほど甘くは無いだろう。ストレートも低目を狙うと伸びに欠ける傾向がありリリースコントロールが出来ていない印象。自分だけで二つも三つも課題を克服するのはさすがに厳しく、いい加減紀藤・杉山両投手コーチに手腕を発揮してもらいたい所である。
両輪は揃ったのだが、グリンの退団もあり3番手以降が手薄な先発陣。規定投球回に達した山村は球威も目を見張る制球力も無いから昨年が精一杯かな、と思ってしまう。愛敬もスケールが足りず1年間ローテーションを守るスタミナも不安。とにかく3枚安心できる先発が居れば台湾勢2人に永井・牧野・朝井と先発候補は頭数が揃うようになったので良い戦いが出来るはずである。インチェ・林の台湾勢が期待通りの働きをしてくれれば埋まるが、出来れば日本人選手でもう一人欲しい。
毎年期待しているのが変則左腕の有銘である。05年は球団史上初の完封、昨年は延長12回を一人で投げきるといったように嵌れば素晴らしいピッチングが出来る逸材である。
05年実際に観戦する機会を得、それは05年初先発時であったのだが、この試合で有銘に対する見方がガラリと変わった。それまではリリーフで防御率7点台という脆弱ぶりもあり試合前は「5回まで投げられれば良い方だな」なんて考えていたが、試合が始まるや否やその伸びが抜群なストレートと痛烈なスライダーで日ハム打線を翻弄していく。第一関門の5回をあっさり投げ抜くと、終盤慣れからピンチを招くようになっても右打者の膝元に度胸良くスライダーを投げ込み併殺で切り抜け続け、ついに9回までゼロを並べた。味方打線も0点で完封はその半月後までお預けとなったのだが、これほど1試合でガラリと印象が変わった選手も珍しいのではないだろうか。昨年も期待されていたが前半は一・二軍往復が続きローテ入りしたのは後半戦。間隔も一定せず調子を崩し2勝に終わったが延長12回完投など光るものがあったのも事実。2年間いずれも後半戦に力を発揮しているから、そろそろ開幕から戦力にならなければ「真夏の恒例行事」としてしか見られなくなる。首脳陣もリリーフに起用したり中4日で起用したりと便利屋として見られている感があるので、キャンプから死ぬ気でアピールし生き残りたい。
リリーフ陣は高齢選手が多く不安であるが、小倉・福盛という中心軸さえ万全なら野村お得意の刻み戦術でそれほど苦労はしないはずだ。短いイニングなら好投出来るという事を徳元・藤崎・渡辺恒も理解し自信が付いたに違いなく、移籍組では佐藤・川岸の踏ん張りにも期待したい。戦力外というどん底から華麗に復活を果たした小倉は制球心情のサイドスロー。03年辺りから多彩な変化球に手を出し過ぎたせいか(ナックルまで投げていた)コントロールが乱れ始め、先発からリリーフに役割を変えても収まる気配は無く球威の衰えもあって不本意な成績を続けた。だが昨年はスライダー・シンカーと少数に絞りコントロールが蘇った。今季も同様の路線でいけば不安は少ない。福盛は決め球がフォークという典型的なクローザーの形であるが、他球団のそれと比べるとストレートに速さが足りず、フォークの落差という点でも物足りない為シュートを多投するスタイル。昨年一気に数字を伸ばし定着を果たしたが、フォークが武器のクローザーはストレートに威力が無いと長続きしない傾向なので今季は注意。シュートが冴えなければ苦しいだろう。
とまあ期待の新星・田中抜きと考えて書き連ねてきたが、周囲の空気や野村の「今年限り」という思いもあり抜擢される事が濃厚であろう。先発だと体の過剰なねじりなど投球フォームに不安があり、緩急の面も不足しているので素直に定着するとはどうしても思えない。それでも抜擢してくるならばせめて「1試合投げたら抹消→10日後再登録」など無理使いを控える配慮が欲しい。それに田中よりもむしろ1年前の1巡目・片山が出て来るようでないと首脳陣が正常に機能していないという証にもなってしまう。一見粗っぽそうな大型左腕だが技術的にはかなり完成度の高い投手で、線の細さを改善すれば早く台頭できる素材なのだが昨年はファームでもわずか1試合。田中フィーバーに乗っかる前に、高卒選手の指導体制を整える方が先ではないだろうか。

頭数は充実。選手を束ねる能力の程は 〜広島

主な戦力表
(ブラウン監督の構想を考慮に入れ野15:投13という一軍枠にしております)



一連の転落への流れはとりあえず塞き止められた前年。ブラウン監督が「勝負の年」と定めているだけあって2年目にかかる期待も大きい。それには整備された野手陣の更なる隆盛が不可欠だが、「出塁率を考慮した打順」で出遅れた前年を考慮すれば不安は少ない。内野の控えに薄さを感じるが極端ではなく、後はセンターの人選がカギを握る。
その投手。世間体では相変わらず黒田だけという先発の印象だが、不確定なローテーションを目指すべき候補の数は充実している。期待の新星という位置にも大島だけ、という壊滅的な陣容だった前年とは偉い違いで、熾烈な競争を勝ち抜き一軍定着する選手は果たして誰なのか?

<守備力チェック>

捕=倉・石原の併用路線も今季で終了か。石原がもう一つインサイドワークで化ければ
一=栗原のポジション。とにかく捕球能力のアップを
二=脆弱さがすっかり消え失せ安定した東出
三=簡単なゴロは弾くくせに難しい球の処理は上手い新井。エラーは気にするな
遊=梵の成長速度がどれだけのものか。オフでの東出との「愛」の成果は如何に
左=体調を整えて堅実に守れるようにしたい前田智
中=外野のどこかに廣瀬を入れたいのだが。緒方が衰えたらスタメン定着か
右=嶋の強肩は魅力だが守備範囲は相変わらず不安。山田−廣瀬という右中間はどうか

<野手陣>

最初に捕手陣の話をしよう。石原の能力に大差が無いと判断したブラウン監督は両者の力量を見定めようと、確信犯ともいえる位に両者を併用させた(スタメンマスク試合は両者同数)。その結果が石原は持ち味であった強打が失われ平凡な成績に終わり、倉も自慢のスローイングが冴えず盗塁阻止率が低下。そのためどちらかに固定せよ、という声が周囲から上がるのも頷けるが、個人的にはこのまま併用策でも構わないと思う。パリーグでは05年にロッテが、昨年は日ハムが捕手併用策をとって優勝しているように併用策は決してマイナスでは無い。ロッテの橋本・里崎両名も前年の04年は昨年の倉・石原のようなものだった。だから駒のように併用されたとしても、光り輝く駒になれと両者に言ってやりたい。尚今季は「打てる捕手に一本化する」という方針を打ち上げており、外野手として入団したルーキー・中東をキャッチャーとして戦力入りさせるなど底上げに必死である。
また倉を固定すべきという意見を持つ方の根本には「昨年は倉の方が勝率が良かった」という歴史的事実があるからなのだろうが、だからこそ僕は正捕手の座を自分のものに出来ない倉の方に不満を感じてならないのである。本当に石原より何もかも優れているのなら、昨年9月10日に井生に途中交代という屈辱を受ける事は無い筈ではないのか。両者は今季も共に競い合って、相乗効果で投手陣を盛り立てて貰いたい。
二遊間がそのまま1・2番に定着という広島本来の姿に戻った昨年(野村・正田とか木村拓・東出とか)。東出はどん底からの浮上という要素もあり当分は野球に飽きが来ないであろうし、は新人ながらエース・黒田に対してもピンチ時にマウンドに行き忠告を送るなどその存在感は一級品。この両名の打順を逆にしようというのが今季の構想である。東出は意識を「鋭い打球を打つ」から「徹底してゴロを打つ」に変えて生き残りを果たし、ホームラン0という数字は逆に勲章である。梵は引っ張って強い打球を放てる反面バント失敗の場面が目立った、という両者の適性を考えてその結論に至ったのであろう。独断オーダーでは昨年どおりの打順にしたのだが、これは僕が単にジグザグ打線を考慮しただけなのでブラウンの構想通りでも問題は無い。というかむしろその方が良いであろう。
近年の広島らしからず内野はれぞれ「1ポジション1人」で成立しているのと裏腹に、前田智・緒方・嶋で固まりつつあった外野陣がおかしな事になっていた昨年。前田智は故障離脱期間があったものの、大事には至らず無事1シーズンを乗り切った。大ベテラン・緒方は故障以前に守備範囲の衰えが心配で、ライトの嶋は管理不足によるオーバーウェイトで冴えを無くしている状態。今季はかなり体を絞っているとの事だが全般の信頼は置けず、どこかに守備名人・廣瀬を組み込んで守備を安定させたいのが本音だろう。昨年終盤に2割4分台だった打率を盛り返した緒方は復調気配があるものの、折角二遊間が安定してきたのだからセンターで足を引っ張る格好とはなりたくない。昨年1試合だけファーストを守らせたブラウンの気持ちは痛いほど良く解るし、それに不満を抱いた緒方がセンターに合致した選手である事も理解できる。だが仮にセンター緒方が変わらなくても守備要員は必須であり、廣瀬の強肩がライト向きだと判断されれば森笠はスローイングの拙さと後方に飛んだフライ処理が不安要素なので山田をベンチに準備しておきたい。
名が挙がった森笠だが、過去のトラウマを払拭せんとばかりのスイッチ再挑戦は非常に好感が持てる(03年は右で打っていた対左投手に滅法弱く翌年スイッチを取りやめた)。「欠点は抑え付ける」という山本前監督以下首脳陣の理念により選手の可能性がずいぶんと狭められてしまい、それが05年の最下位という結果に現れてしまったように見える。普通は山本のように「優勝を狙う」とあらば人材・特徴を絞り込みたくなるものであるが、ブラウンの前向き思考は今季も相変わらずのようである。
栗原もその1人であり、4番新井・5番前田智を中心に打順を作っていく広島だけにその存在は重要なカギとなる。3番か6番が予想される打順でありその粗々しさから6番に置きたくなるものだが、同じく粗っぽいという評価を得ている新井がシチュエーションヒッティングを身に付け、その後ろに前田智がドンと構えているので新井の前で自由奔放にブンブンと振り回す3番が居ても違和感は少ない。しっかりして欲しいのが守備面だ。規定打席に到達せずで9失策はファーストとしては多く、捕球の精度を上げて貰わないと東出・梵がいくら成長を魅せても徒労に終わってしまう恐れがあり、これからのファースト守備はセンターラインと同じくらい重要になってくる。
主砲・新井に対応力が付いたと言ったが、一抹の不安は独特の打撃フォーム。ステップが性急なうえアッパースイングという悪癖が新井のフォームの特徴であるが、それが直らないまま開花して中心打者と化しているのも珍しい。変化球などでタイミングを外されたら性急にステップした左足の強靭な筋力でタメを作り、体の軸を傾けながらもアッパーで捉えるという強引すぎる対応を見せるのである。今現在は身体能力の高さでこなしているが年齢は既に30歳。いわば筋力が衰えたら一気に通用しなくなる恐れが高いフォームであり、そうなる前に修正が必要だと思うのだが…まあこの強引さが新井の魅力ではあるが。
後は浅井・福井が抜けた代打陣の存在が競った試合では必要となる。ここに尾形・比嘉・大須賀といった苦しんでいる面々が入ってくれば層は厚くなるのだが。

<投手陣>

昨年の時点で固まりつつある野手よりも、未だ形を得ない投手陣の方に期待が寄せられる。昨年の開幕前は黒田・大竹・ダグラスの3本柱以外は大島の成長に賭けるしか無いという悲惨な状況だった。それが今季は多数の選手が空き枠に飛び込まんとしており、勢いという面では広島がトップなのでは無いかと思えるぐらい頭数は充実している。これも昨年のブラウンによる意識改革の成果なのだが、頭数が増えても戦力を束ねるという方面でのブラウンの能力はまだ未知数。という事でまずは予想される候補を大体的にリストアップしてみよう。
先発=黒田・大竹・ダグラス・佐々岡・フェルナンデス・長谷川・高橋・宮崎・青木高・河内・大島・小島・斉藤・前田健
リリ=永川・林・梅津・広池・横山・佐竹・上野・青木勇・小山田・マルテ
前年は先発の4・5番手に佐々岡・ロマノをあてていたが、それだけ昨年の時点では頭数が少なかったという事である。今季は主戦力であるダグラスの出遅れが示唆されているが、これだけ先発候補が居れば勢いをもってして埋められる。先発と比べてリリーフが人員不足だが、先発枠の競争から漏れた選手が入れば問題ない。
エース黒田が不振になるとしたら手術の後遺症だろうが、既にただのパワーピッチャーから脱皮しているので今季も左右攻めでフォークを出し惜しみつつ有効に使う投球スタイルが出来れば気にならない。ツボに嵌れば100球未満でも完投できるペース配分にも信頼が置ける。大竹は昨年こそ大幅負け越しに終わったが、若手の開花を予測するには成績だけを見ていると痛い目に遭うのが常。05年=とにかく1年ローテーションで投げ続ける→防御率・与四死球大幅悪化 06年=課題を克服する投球をする→こじんまりとした印象 というプロセスを踏んでいる大竹、今季は過去2年の長所が融合し爆発の予感がする。
昨年1年間ローテーションを守った佐々岡は40歳という年齢がやはり不安材料。完全技巧派の阪神・下柳と違ってストレートにある程度の威力・キレが無ければ駄目なタイプであり、昨年も疲労が見られた夏場は全然勝てなかった。ナックルボーラー・フェルナンデスは全投球の9割方がナックルという日本では見られない投手だ。過去にこのタイプとしては近鉄・マットソンが居たが、1年目後半にそこそこ活躍を魅せたのだが2年目は何を勘違いしたのかストレートの割合を増やした挙句メッタ打ちに遭ってしまった。ひたすらナックルに活路を見出す事がフェルナンデスが活躍するカギだろうが、それには無駄な四球を減らし暴投防止に務める事が重要である。
リリーフを務める事により何とか生き残った長谷川・高橋・河内の3名。この中で最も先発復帰の期待がかかるのが長谷川。昨季の役割はロングリリーフで先発は4試合のみ。威力あるストレートとカーブ・フォークという縦の変化球のコンビネーションでリリーフとして適性を魅せたが本人の志望は先発。黒田を手本にし今季はカットボール・シュートと左右攻めを身に付けようと必死であり、マスターできれば02年(13勝)の再現は有り得る。高橋も昨年の54試合登板で自信を付けたのだろうが、「9イニングを投げられる体にする」という発言も見られているのでこのブラウン流とのズレが不安点。いい加減佐々岡みたく責任イニングを全力で果たす献身的な姿勢が欲しいのだが。河内はドラフト1位左腕という事もあり当然周囲も先発として期待を掛けているのだが、昨年を見ているとリリーフとしての適性は抜群でこのままリリーフに活路を見出したほうが良いと思う。というのもこの河内、毎年開幕前にフォームが固まらずそのせいで出遅れというパターンに嵌っている。だから多少のフォームの粗さは気にせず、短いイニングを全力で抑える役割の方が合っているように見受けられる。変化球もスライダーだけが突出してキレが良く他に乏しいのだから尚更である。
続いて新人3選手。巷では大成功という昨ドラフトにおける広島の評価でだが、いずれも新人らしからぬ高齢で活躍しなければあっさりと指名がパーになる危険も孕んでいる。今季29歳の宮崎は豪腕先発タイプ、上野がストレートとフォークのコンビネーションが武器のリリーフ、青木高がスライダー・カーブの変化球のキレが良い技巧派左腕で先発・リリーフどちらも可能、という今の所の評価だろうか。最も即戦力性が高いのが上野であり、当初は先発を含めた調整が囁かれたが本人の希望通りリリーフで行くことが濃厚。既存の横山がフォークの抜け球に苦しみ被本塁打を量産した昨年の事もあり、とにかく大車輪の活躍が望まれる1年目。スライダーは腕の振りが緩む癖があるので封印した方が良いだろう。希望枠の宮崎は最速153キロのストレートと、栗原に「ソフトバンク・新垣さんのようだ」と言わしめたスライダーが武器でこれにシュートも交える。緩急が無いので先発でやっていくには縦の変化が欲しい所だが。青木高が新人の中では最も安心して先発に送り出せる素材。ただストレートに一定の速さがあるものの、他の2人に比べてスケール不足に陥る可能性は否定できない。
とにかく技術的にも精神的にも幼い大島、ストレートに威力が無いのに細かなコントロールも不足がちな小島・斉藤の左投手3人にはシーズン通しての活躍は酷。高卒ルーキーながら完成度の高い前田健も即戦力の期待がかかるが、体力面でゴールデンルーキー・田中(楽天)に劣るのでファームで体力強化しつつチャンスを伺いたい。「技術的には問題無し、後は体力作り」という高校生の素材を獲れたのは久方ぶりであり、この事からも広島の上昇機運を感じてならない。
リリーフエース・永川に繋ぐまでひたすらセットアッパーが一定しないバケツリレー方式であった昨年。化け物のようなスライダーに活路を見出す林、先発代打もこなす広池は今季も常時待機が期待されるがセットアッパーとなると役不足。変則サイドの梅津は昨年後半戦に復調を果たし、技巧派だが奪三振率の高さで存在をアピールした。一年間フルに働くには不安が多いが、大竹同様3年目の飛躍に賭けるしかない。小山田は05年はローテーションを務めたサイドスローで序盤こそ快調だったが、足腰に疲れが溜まり易いサイド故完投・中5日という起用法に根を上げて色を失い、ようやく復調気配を魅せているのが今キャンプ。復活するとしたらまずは高橋・長谷川同様にリリーフからだろう。
磐石なのが黒田・永川ぐらいというのが評価の低さに直結しており、今季も頭数は充実しつつあるが決定力に欠けるという陣容。当然ベンチの育成・采配能力が最大限に発揮される事が上位への絶対条件だが、一昨年・昨年と続いた壊滅的状況を救ったブラウン以下首脳陣だけに不安よりも期待の方が大きい今季。まずは開幕一軍メンバーがどうなるか注目したい。

05年の全員野球の再現をば 〜オリックス

主な戦力表



コリンズ新監督の下再スタートを切るが、正直このチームを建て直すのは難しい。新監督のやり易いように陣容を整えるのがフロントの仕事なのだがやっている事が逆なのが第一の問題点。中村の退団で爆弾はひとつ減ったものの、ラロッカ・ローズと爆弾要素が新たに加わり今季も首脳陣は編成の面で苦闘は必至だろう。
投手陣も同様で先発の整備が進んだ反面、05年にあった一体感がまるっきり失われつつあったシーズン。クローザーの安定化も図らなければならないが、時には思い切った配置転換も必要でそれが今のオリックス首脳陣は腰を引きすぎていると思う。

<守備力チェック>

捕=日高の奮闘は昨年目立ったが控えが不安
一=北川が濃厚なのだが故障がちなラロッカに就かせたいポジション
二=誰に就かせるのか悩むポジション。森山の成長待ちか
三=恐らくはラロッカだろうが不安は多い。守備固めが必要
遊=守備力なら文句無く阿部真。スケールという点では適任者が居ない
左=新外国人アレンが濃厚か。果たしてその守備力の程は
中=実績ある村松か、広範な守備力の平野恵か
右=村松・平野恵の右中間は魅力だが平野恵の打力が不安

<野手陣>

中村というトラブルメーカーが退団し一安心、と言いたい所だが清原・ラロッカ・ローズと同質の選手が未だ蔓延っているオリックス。新任のコリンズ監督がどんな采配・選手起用を魅せるかは全く未知数なのだが、フロントはロクに陣容整備も行わないまま「最低でもAクラス」という要望にもならないエゴ丸出しの発言を首脳陣に向けて行うなど今季以降も期待薄。コリンズにチームを託すというよりは阪急OBを球団から滅殺したいのでは、といううがった見方をしてしまう。関係無いが、この度入れ替わって球団社長に就任した雑賀は「清原以外の選手を知らなかった」らしい。
中村とラロッカ、ガルシアとローズ、ブランボーとアレンが入れ替わっただけで前年と大して代わり映えしない布陣である。その代わり映えしない選手に信頼性があればいいが、昨年の規定打席到達者はたった3人でそのうち谷は巨人へ移籍し、残る2人村松・塩崎はそれぞれ35歳・34歳という年齢が不安要素。谷も同じような年齢だったからベテラン偏重は明らかで、規定以下にも北川・清原・水口と峠を越えかかったベテランが顔を並べている。
ちなみに昨年の他球団での20歳代の規定到達者を数え上げてみよう。
 日ハム=2人   中 日=3人
 西 武=3人   阪 神=2人
 ソフト=1人   ヤク√=3人
 ロッテ=2人   巨 人=1人
 楽 天=1人   広 島=3人
 横 浜=1人

どのチームも最低1人は存在するのにオリックスだけ皆無。しかもいずれも中堅とは呼び難い33歳以上の選手なのが危機感を一層引き立てる。この閉塞感を解消するどころかヤクルトを首になったラロッカ(今季35歳)、出戻りでブランクもあるローズ(同39歳)を獲得したりするなどツギハギ補強で乗り切ろうとしているのだから推して知るべし。ちなみにローズは既にFA権を獲得しており扱いは日本人と変わらない。だから外国人5人を同時に起用する事が出来るのだが、そのローズ自身に余力が残っているのかが問題である。
まずは故・仰木元監督の呪縛ともいえる「猫の目打線」からの脱却を目指すべきである。中心選手と期待されているのは言うまでも無く清原であるが、フル出場が無理と解りきっているので彼は構想から外して考えたい。
選択した16人のうち20歳代は6人。最若年が森山の26歳で既に中堅入りしており、彼を二遊間に置きつつ後藤・大西ら打力・走力が高いメンバーを組み入れて新風を入れたい。これでチャンスメーカー・下位打線タイプは何とか埋まりそうだが、スラッガータイプとなると目立つのは30歳の相川ぐらい。無理を承知で岡田を抜擢したい所だが未だバッティングの形で悩んでいるとの事で時期尚早。村松の後継者として期待の若手・坂口が収まればセンターラインも見栄えするだろうが…。フェンス激突で重傷を負った平野恵だがそれ以前に昨年は打撃の淡白さが目立つ格好となっていたので上位打線は重荷。巨人・小坂と同じくフォアザチームの意識を強めるとかえってフライを打ち上げてしまいがちな選手なので8〜9番辺りが適性か。内野か外野どちらをこなすかも不透明な状況だが、ひしめいている二遊間を見れば外野に落ち着くと思われる。
こうして名を挙げていっても、肝心のクリーンアップはどうあがいてもベテラン・外国人頼みとなる事が濃厚である。特に4番候補が晩年と形容される清原とラロッカというのが頂けない。30歳ジャストの相川が5番に座るなりして風穴を少しでもこじ開けたい。
来日1年目のコリンズだけに、ヒルマン(日ハム)・ブラウン(広島)のように今季は色々な選手を試して力量を見定めるといった方策が採られる可能性は高い。だからこれまで上記で挙げた名前以外にアッと驚く大抜擢があり、そのチャンスをモノにして這い上がっていく選手が出て来るかもしれない。既存選手に不安が有り過ぎる現状だからこそ楽しみは新たな戦力の台頭と、新外国人アレンの大化けである。

<投手陣>

川越・デイビーのゲームメイク率100%コンビが健在の先発陣。両名とも打たせて取るピッチングへとシフト出来ているので高齢化しても(ともに34歳)急激な衰えは来ないであろう。これに近年の即戦力投手偏重ドラフトも加わり、野手に比べて投手は割と安定した陣容である。
その即戦力ドラフトで加入した代表格は何と言っても平野佳。ルーキーイヤーの昨年は勝利数こそ7に終わったが、10完投はダントツのチーム1で12球団でも2番目に多い。この完投ラッシュ故後半は疲労で調子を落とし安定性に欠いた結果となったので、オフの身体のケアは万全だったのかが2年目のジンクスを乗り切るポイントとなりそうだ。
これにヒジ痛が治まりリリーフ定着の機運がある04年自由枠の金子、故障から立ち直る事が出来れば貴重な戦力となり得る光原、昨年終盤に先発として適性を見せた中山・岸田に昨ドラフトの希望枠・小松が加わってくれば、実績のある先発吉井・本柳、磐石のリリーフ陣である加藤・菊地原・大久保にクローザーの期待がかかる新外国人カーターと戦力が整えられる。新戦力組はいずれも実戦型で抜擢されれば定着する可能性が高いだろうし、大ベテラン吉井は最晩年だがシュート攻めが冴えれば衰えはカバーできるし、カーターは多彩な変化球が武器ということでクローザーとしては蓋を開けてみないと解らないが前年やや不調に終わった加藤・菊地原・大久保が復調すれば勝利の方程式も結成できる。だがこれで良いのだろうか、という思いが頭をよぎる。何かが物足りない気がする。
確かに新戦力組は成功率が高い選手が揃っており、余剰戦力にもセラフィニ・歌藤・山口・ユウキ・萩原と悪くないメンバーが控えている。だがチーム力を向上させられるかと問われれば疑問符を付けざるを得ない。戦力にはなるがスケールが足りないのだ。本格派としての資質を持ち併せているのは平野佳ただ1人といっていい状態で、このため既存戦力が刺激を受けるという事も無くノホホンと自分らのペースで投げ続ける事が予想され、当然チーム一体となって戦うという事も無くなる。オフの契約更改で揉めた吉井・川越なんかは特にその風潮を持ちやすい選手である。
そんな状況からか、昨年のドラフトでは従来のオリックスからは考えられない高校生重視の指名を敢行した訳であるが、元々高卒選手が大成しない土壌であるから焼け石に水で終わる危険性が高い。現に球団合併で振り分けられた近藤・宮本・高木といった近鉄勢の高卒選手は足踏み状態である。
だから新監督のコリンズにやって貰いたいのは大幅な配置転換である。中継ぎの柱である加藤や菊地原を先発へ転向させるなどして、先発は数多候補を作りその中で5〜6人枠を目指して競争、リリーフはまっさらな状態からそこへ向かって支配下選手全員が目指すという図式を無理矢理でもいいから作って欲しい。特に仰木の遺産ともいえる勝利の方程式のうち菊地原・大久保が故障で出遅れ、加藤も実戦で不調だというから尚更である。
広島から移籍してきた菊地原は、常時「○○のために」という意識を自らのパワーにしながら投げる投手である。昨年初めてオールスターに選出された際も恩師ともいえる仰木への言及を忘れない律儀な選手で、監督から信頼されればされるほど奮起するタイプ。反対に「何のために投げるのか」と思ってしまうと成績が伸びない選手でもあり、昨年は故障があったものの起用・采配で混迷を見せた前監督・中村との信頼関係は今一つに感じられ、それが自ら、ひいてはチーム全体の不調の遠因だったように思える。チームで一・二を争うほどのフォアザチーム精神の菊地原がこれではチームの一体感など夢のまた夢で、清原・中村の獲得が完全に負の方向へ作用してしまった象徴であった、とは言いすぎだろうか。
コリンズにはゼロからやり直す覚悟で投手スタッフを作り上げて欲しいし、1年目から大胆にも延江・仁藤ら高卒ルーキーをリリーフで大抜擢したって良い。同時に親会社もいつまでも清原のブランドだけに期待している場合では無く、中村問題で露呈する形となった(といっても落ち度は中村の方が圧倒的に高いのだが)バックアップ面の弱さを改善し選手達全員から喜ばれる球団を目指したって良いのではないか。ひいてはそれが新たなチームの一体感が生まれる要因となるのだから…

無駄な補強でセンターラインの守備力低下 〜読売巨人

主な戦力表



今オフも「優勝しなければならない」の精神の下、補強ともいえない戦力掻き集めを行った。ハッキリ言って野手の補強は無駄ばかりである。もし補強選手が全員レギュラーに定着したら守備力は大幅な低下になってしまう。本当に選手育成のための忍耐・我慢が足りない球団という事を再認識させられたオフ、起死回生のウルトラCはあるのだろうか?
この野手の無駄は投手にも影響し、外国人枠の関係で成長著しい姜がフルに出られないなんて事になったら補強策は寧ろマイナスである。そうなると当然4番手以降の先発が不安であり、救いはここに飛び込む若手の多さなのだが彼らを使う力量は原監督以下首脳陣に存在するのか?

<守備力チェック>

捕=阿部の肩の状態が戻り一安心。星・實松とディフェンスに事欠かない控えも居る
一=李のゴロ処理は不安だがまあ安泰だろう
二=脇谷の成長には期待していないのか。ゴンザレスは未知数
三=そもそも本職がファーストの小笠原。昨年はサード自体少なくかなり不安
遊=二岡にオーラが無くなって久しい。ここに小坂が入れば…
左=高橋由が衰えゆえ前年同様ここに入るのが濃厚か
中=谷では無理。鈴木か矢野を起用したいがそうはいかないのが↓
右=新外国人ホリンズが座る場所。まあ無難らしいが実際にはどうか

<野手陣>

「監督たるもの常に他チームより優れている戦力を持ちたいものである」とは中日・落合監督のコメントである。その思想を持つ監督は、対外はフロントの消極的な姿勢には不満を抱かずにはいられないものだ(今オフの西武・伊東監督がいい例)。
だが圧倒的なバックボーンを持つ巨人という球団となると話は別。上記の思想を持つよりそれを抑える努力をしなければフロントがどんどん現有戦力のバランスを考えない選手獲得をしてしまいその結果監督としての手腕が発揮できずシーズンを終える…というパターンに陥りやすいチームなのである。原監督は03年の辞任の件もあり「結果を出さなければまた同じ目に遭う」という恐怖心の下、上記の思想を止める術は完全に消え去ってしまっている。おかげでセンターラインに楽しみな素材がポツポツと現れた所を完全に成長の蓋を閉めてしまった形となってしまい、この時点で育成枠ドラフトで魅せた「育成の巨人」という姿勢が虚しく感じてしまう。
おかげで独断オーダーは完璧に妄想といえるものになってしまった。完全に守備の事しか考えていないからこうなったのだが、これでもまだ足りない。小笠原を外してセンター鈴木・ライト矢野という布陣が最も安定性あると思う。ベテランの域に入った小関はライトが適性ポジションで、西武時代はセンターだと時々考えられないミスをやらかす選手という印象が残っている。ショート小坂の凄さは語るまでも無く、ショートは安定性ももちろんだがそれ以上にダイナミックさ・守備範囲が求められるポジションなので、故障絡みで冴えを失いつつある二岡がショートのままで良いのか首脳陣にはもう一度自問自答して貰いたいのだが。
ともかく安定してセンターを任せられるのが鈴木しかいないのが最大の泣き所となる。新外国人ホリンズはアメリカでは守備の方も買われていたが、軽快なフィールディング、という訳にはいかず強肩強打タイプだから適正としてはライトだろう。昨年前半は高橋由が守ったポジションだが肩・守備範囲の衰えは明らかで途中からレフトに回される結果となった。故障続きなシーズンを送っているから打撃はともかく天性の身体能力が要求される守備面が今更復調するとは思えない。これは新参者・にもいえる事で、3番を任されるようになってから走塁面で機能しなくなりただのバッティングマシーン状態に。その打撃が2年続けて不振に至っているのが現状であり、補強とはいっても前年の打撃成績が矢野と全く変わらない(しかも谷の方が場数多い)選手を獲って何になるというのだ。しかも守備面では矢野の方が遥かに上回っている。そう、巷でオリックスの最強外野陣は「イチロー・田口・谷」とされる事が多いがこれがそもそもの間違い。こんな報道がされる度に「本西の事は記憶から抹消ですか?」なんて突っ込みを入れたくなるものだが、谷はイチロー・田口が脇にいるからこそ生きた人材であり、実際オリックス時代はファーストに回される事も多かった。そしてイチロー・田口が居なくなるとあっさりとオリックス外野陣は崩壊。特に03年はエラー機会の少ない外野なのに二桁失策を記録するなど散々であった。そして昨年は高橋由と同じくレフトに回されているから、守備での期待は早めに捨てないと早々に転落する危険が高い。
ゴンザレスを何のために獲得したのかも意味不明である。外国人枠で困るわ、脇谷の出番は減るわで良い事無いはず。「脇谷が成長しきれない時の保険」とメディアを通じて語られているが、首脳陣が脇谷を我慢しきれずメジャー経験が豊富というゴンザレスの誘惑に負けるという事は容易に想像でき、どうにも若手の成長を見守るという我慢が始めから存在していないのではないかと思わされる。ユーティリティプレイヤーとしてゴンザレスを評価する前にやるべき事は沢山あるはずだ。
打線の組み方も非常に困難を伴う要素で、4番・李を基本路線として小笠原は日本ハム時代と同様に3番、5番には右の大砲として期待がかかるホリンズが濃厚だが、二岡・高橋由ら生え抜きがすっかり外に追いやられてしまった感ありで、こんな調子で求心力が付くのかいささか疑問。谷が額面通りの働きをすれば1番は何とか埋まるが、そうでない危険性の方が高い現状では代わりのパターンが欲しいし2番にも人を得ない状態。二岡が2番に入るような事があれば生え抜きはすっかり期待から外れているといって良く、昨年も李や小久保などに送りバントさせてきたのだから二岡が小粒な2番打者に成り果ててしまうという危険も十分考えられる。どうやらどこをどう考えてもマイナス要因が絡んでしまうのが今季の巨人打線らしい。
2番打者の適性という観点では、脇谷は社会人時代大振りが目立ち現在もその名残がある。四死球も一桁と早打ちなので、俊足を飛ばしての1番定着が望まれる。一見適性がありそうな小坂だが、ロッテ時代は後期につれて2番が少なくなりバレンタイン監督時代は1試合も無かった。バッティングに関してはあれこれと考えて簡単にフライを打ち上げるという悪癖が見られ、1番や9番で思い切り打てる措置がとられた所ようやく成績上昇したのが05年であったから適性は低いというのが正しいだろう。こうして見て行くと現有戦力ではこの穴を埋められないという結論に至るので、やはり二岡が入ることは避けられないのだろうか。現状では脇谷・鈴木でコンビを組ませたうえ、バントなどの作戦は雁字搦めにさせず快足を生かすべく自由に打たせる、といった措置で打撃が今一つな両者の殻を破るべきであろう。

<投手陣>

「アジア枠」という得意の「巨人のお家事情に合わせた制度導入」が今オフのフロントの動き。李に加え昨年終盤に台湾出身のという好投手が台頭、育成枠では数多く台湾・中国から選手を招いているという人事もあり、新外国人野手を揃え、さらにキャンプで入団テスト生を招いているのもこの制度導入を見込んでの事だったのかもしれない。だが今季からの導入は見送られ、外国人枠をどう遣り繰りするかという課題を突き付けられた格好となった原。
その姜をどう起用していくかで今季の投手陣は大きく左右されそうである。クローザーの豊田が不安定化しているチーム事情からクローザーに回す案も浮上しているが、クセ球で勝負するタイプだから決め球が無いとなると恐ろしい結末に至りそうなのでお勧めできない。逆に先発に組み込めれば不安要素の多い高橋尚門倉をリリーフに回して年齢バランスも秀逸なものとなるだろうが、やはり最大の懸念は野手3人との兼ね合いである。
先発予想には新人・金刃を入れた。同一リーグで同じ左腕投手であるライバル・大隣(ソフトバンク)と何度も対決し力を増していった大学時代。大隣ほどのスピードは無いが実戦力という点では上回っていると推測する。得意球のスプリットは空振り用と打たせる用の2種類あり、投球フォームがしっくり来ない日でも「その中でどう投げるか」という気持ちの切り替えの早さはまさに即戦力。当然先発の一角を期待するのだが、「選手の特性を理解せずただ手薄な所にはめ込む」というのが巨人の悪しき伝統なので左投手が不足しているリリーフに回される危険が大きい。そうなると元来先発向きの久保が昨年リリーフで悪戦苦闘したのと同じ目に遭ってしまうのは時間の問題である。
この金刃を初め相変わらず大化けの期待が持てる有望株が多い。野間口・辻内・福田・真田…。だが多く見積もっても13人しか一軍枠は用意できないし、今季も他球団から門倉・吉武という実績ある投手が加わったので可能性は限られるだろう。
門倉は悪いなりにも10勝したのは立派なのだが防御率・イニング数の劣化が激し過ぎる。05年は197イニングという量をこなした結果奪三振王(177個)にも輝いたが、昨年は158イニングで114個だから数でも割合でも及ばず、球威・キレが鈍っていると容易に推測出来る。被安打187という膨大な数にしてもそうである。吉武もソフトバンク側がプロテクトしなかったという事もあり同様の危惧がなされているが、三振数の減少(49→36)以外は特に不安なデータも無く余力は残っているだろう。過去に先発完投型エースを狙っていたがその野望が尽き果て、ようやくリリーフとして活路を見出す事に成功したのが03年。元同僚の倉野と同じく浮き沈みの激しいプロ生活を送っているのがマイナス要素だがカットボールをコーナーに配した打たせて取るピッチングが出来れば同様の活躍は期待して良い。
その吉武が加わったリリーフ陣。昨年中盤以降の落ち込みで不安視が止まない豊田であるが、西武時代末期から既にその予兆はあった。02年は防御率0点台という完璧なリリーフを魅せ、翌03年もやや上昇したとはいえ1.24はずば抜けた数字。これで2年連続セーブ王となったものの04年は故障が長引きわずか11セーブ。防御率こそ0点台であったが翌年も故障し内容も悪化(3.97)。そのため西武フロントも何が何でも引き止める、という姿勢ではなかったのだろう(監督の伊東は流出に怒り心頭だったが)。同時期にFA移籍してきた野口が全く戦力になれなかった事もあり、過去の実績だけを見てのFA獲得はもう止めろ、という声しか出て来ない。
話は脱線するが、大学・社会人を経ての選手つまり「即戦力」は、対外はアマチュアでの実戦経験を下に自分自身の野球観を身に付けている選手が多数であろう。だから久保のように先発からリリーフへと配置転換されても中々それに順応出来ないという現象が生まれる。反対に高校卒のはリリーフに順応しているという印象。03年に先発で見出された頃はとにかくストレートに速さが無く技巧とキレで抑えているという印象だったが、現在は140キロ台中盤まで速さが上がり、決め球のフォークも結構なもの。高校卒選手は起用法・指導法次第でどんな形にも成り得ていく良い見本である。
このため巨人の永遠ともいえる課題のクローザー不在を解決するには、即戦力に頼るのではなく高校生を時間を掛けてクローザー色に染め上げていくのが確実だと思う。他球団のクローザーを見てみるとほとんどが即戦力選手だが、日ハム・楽天以外はいずれも速いストレート+決め球1種類が優れているが入団時点では粗の方が目立っていた未完タイプ。そこからクローザーとして育てていった結果が定着なのであった。一方の巨人は逆指名などで即戦力を獲得しても巨人スカウトは先発本格派タイプにしか価値観を見出せないので、リリーフにはめ込んでも期待通りの働きが出来るとは考えづらい。本気でクローザーを固定させるのならば考慮しても良い案ではないだろうか。
今季を考えれば新たなクローザー候補は福田か。肘の使い方が気に入らないが、昨年も序盤は荒れ球で相手を翻弄して中々の結果を出していた。本人は「3種類のスライダーが自慢」と言っており、大きく曲がるスライダーは魅力なのだがキレが不足しているのか変化が早すぎるという印象。縦のスライダーを使いこなせるようになり、フォームも矯正できれば大塚(アメリカ)のようなクローザーに成長する可能性は大なのだが…。彼以外では昨年リリーフの際好成績を出した西村か。素質は林以上なので、的確な指導が出来れば最高のリリーフへと変身できるだろう。

一本のラインを作り上げろ 〜千葉ロッテ

主な戦力表



WBCによる調整遅れという低迷の言い訳理由が随分と唱えられた昨年。言ったからには当然今季は低迷が許されないのだが選手層の薄さは改善されたとは言い難い。特にセンターラインであるセカンド・センターが日替わりで良いのだろうか?
先発が6人揃っている投手陣だが、ソフトバンクと違って代替要員が居ないのがキツイ。リリーフ・小林雅に繋げるパターンにも不安が多く、今季も薮田・藤田だけでは心許ない。果たして4枚目以降にリード時を任せられる素材は居るのだろうか?

<守備力チェック>

捕=控えが弱い。里崎は下位に座ってじっくり守備に頭を使って今季も常時出場を
一=福浦で万全。決してズレータに就かせるとか変な事はしないで欲しい
二=堅実タイプなら塀内、華麗タイプなら根元か。堀の衰えは不安
三=まだ若年故動きが冴える今江。下らないミスを無くしたい
遊=TSUYOSHIにどれだけタフさが付いているか。育ちきらずでの小坂放出は早すぎた
左=故障持ちだがべニーが座る以外有り得ない。これが歪みにならなければ良いが
中=サブロー・大塚以外に安心して任せられる選手が居ない。意外と早川が出てきたり…
右=左利き、ということで大松か。まあ日替わりになるだろうが

<野手陣>

実はリーグ優勝を勝ち取った05年から、既に野手陣の低迷の予兆はあったのかもしれない。確かにこの年はバレンタイン監督の日替わりオーダーを駆使した「魔術」ともいえる采配が冴え、熱心な応援団とも相まって「全員野球」を強烈に印象付けた。だが実際は一・二軍の入れ替えが非常に少なく、正確には「『一軍の』全員野球」といった方が語弊がなかっただろう。井上・垣内・林らベテランは衰えが激しく、渡辺正・早坂・塀内・大松・竹原ら若手がまだまだといった印象で、一・二軍の戦力差は思っている以上に激しかった。バレンタインはそれに気付いていたからこそ、アジアシリーズでの中国戦など比較的楽な試合では彼ら若手に実戦経験を与えるなどしてきたのだろう。
だから小坂や李といった主力の予想外の放出は、思っていた以上に痛手となってしまった。西岡(TSUYOSHI)がタイトルホルダー(盗塁王)にまで成長したからフル出場していない1億円プレイヤーの小坂を切っても大丈夫だろう、長打力はチームトップだけど穴も多いし大砲に頼らない打線だから李を無理に引き止めなくても良いだろう、そういった心の油断が一気にBクラスにまで転落した要因ではないだろうか。さらには「WBCに12球団最多となる選手数を派遣したから」という言い訳まで用意して。そうして一気に手薄な陣容となってしまったが、収支のバランスもあり1年で整える事など出来やしない。だからドラフトでは7人の退団選手が生まれた外野手を埋めるので精一杯だった印象で、捕手・内野の薄さはそのまま。金をはたいて大砲のズレータを獲ったものの指名代打では打線はパワーアップ出来ても陣容に厚みを加えられない。
と、2年前から現在のロッテを取り巻く状況を軽く述べてみたところで本題に入る。人員不足だった上従来の戦力の成績下降も目立ち一気に貧弱となった打線。ランナーを出すには出すのだが決定打が出ず残塁の山を作り上げたというのが昨年の印象で、これを解消するためにソフトバンクを自由契約になったズレータを獲ったのは周知の通り。だがこれにより故障がちなベニーが守りにつかざるを得ない状況となってしまった。無理を承知でファーストズレータ・ライト福浦という布陣にしてベニーを指名代打にしても、6年ぶりとなる福浦の外野守備が安心なはずがない。となるとセンターはサブロー大塚で固める事が絶対条件となってくるが、いずれも打撃成績を大幅に落とした昨年。あまりの不調のためセンターに大松平下を持ってくる攻撃的布陣も採られた訳であるが、それがチームの不安定化に一役買ってしまったのが昨年であり、まずはセンターラインを固める事が再浮上の絶対条件なので特にサブローは意地でも復調して欲しい所。
そのセンターラインでもう一つ不安定なのがセカンド。がついに衰えの波に呑まれたという印象で、その都度代役で出てきた根元・塀内・渡辺正は打撃が弱過ぎて穴を埋められず。根元は1・2番を打つのが役割なはずなのに大振りが目立ち、三振率は見事に4割越え(.444)。大学時代は3番を打っていたからプロ入り後切り替えが出来なかったのが直接の原因だが、「長所を伸ばす」のが信念のバレンタイン流の指導が「好き勝手に野球をやらせる」事だったらそれも物悲しい話である。塀内や渡辺正もパンチ力こそ十分だが打席数に比して三振が多く役不足、落ちるボールを正確無比に投げられたらお手上げという粘りの無いバッティング。これでは堀の代わりが勤まるはずも無い。
そんなこんなで頭を悩ませながらオーダーを考えてみたものの、ズレータに4番がすんなりと務まるかどうかが怪しい。ソフトバンク時代は松中という押しも押されぬ4番打者が控えており、ズレータは彼の後ろで睨みを効かせる5番打者。だがロッテには彼以上の打者も彼に追随するスラッガーも居ないので、そのまま4番に入ったらソフトバンク時代よりさらに厳しく攻められて低迷する恐れが高い。今江や大松が急成長を遂げてクリーンアップに収まる事を期待するしかない悲惨ともいえる状況で、昨年と同じように里崎やベニーが入れ替わりクリーンアップに入る事となるだろう。だがこの2人が成長すれば、福浦を2番に置いて打撃が不安定なセカンドの面々を下位に回せるから打線に繋がりが生まれるだろう。大松は昨年こそ場数を踏むにつれて勢いを失ったが、本来は対応力もある柔軟さを兼ね備えたスラッガー。昨年の経験が糧になると信じたい。

<投手陣>

「『一軍の』全員野球」だったのは投手陣も同じ。05年は10勝投手が清水・渡辺俊・小林宏・小野・久保・セラフィニの6人だったが、イニング数で見ると彼ら以外に50イニング以上投げた選手はたった1人(薮田)。6人全員が100イニング以上と抜群の安定感を見せたのだが、その他の先発投手は加藤・黒木・手嶌の3人で合計8試合だけ。当然一軍昇格した選手は中継ぎに活路を見出すしかないのだが、薮田・藤田・小林雅以外にも小宮山・高木・山崎が控え新戦力の出番は無きに等しく、結局セラフィニが移籍しベテラン揃いの中継ぎ陣が衰えた昨年は安定性に欠く結果となってしまった。
その煽りを受け、先発の頭数が他球団よりいやに少ない。一軍レベルで見るときちんと6人揃っており良いのだが、彼らをサポートする人材は皆無に近い状態である。加藤は4試合のうち5回持たずだった試合が3度もあり、黒木は昨年の5試合全てがリリーフというように衰えは明らかで、今季大量に獲得した大・社ドラフトを経た新人の面々も全て中継ぎタイプだから上積みが出来ていない。
そこで大穴が開いた際は昨年の成瀬のような思い切った抜擢が必要となってくるだろう。まず候補に挙がってくるのが成瀬に近い世代の高校生。05年まではいずれもファームで順調に数字を残して来ていたのでロッテの育成手腕とともに信憑性を持っていた。だが浅間が昨年ヒジの故障でファームでも登板無しに終わり、は一軍昇格を果たしたもののすっかりリリーフが板に付いている模様。三島は大幅に防御率を落としており…という風に抜擢時期を逃しており当然今季も期待薄。となると昨年のファームの最多イニング投手・古谷や横浜からトレードで獲得した龍太郎に故障でつまずいた手嶌が層を厚くする候補となる。手嶌は04年の自由枠投手で、僕は無謀にも新人王獲得を予想していた。140キロ台後半のストレートは同期の久保と同様の特徴だったが、久保が実戦的なピッチャーなのに対して手嶌のストレートは強烈な勢いでホップする。いわば凄みでは断然手嶌の方が上だったのだが、投球術・けん制・クイックといった実戦力の面で久保に遅れをとって05年は1試合だけの登板。そして昨年だが、何とか盛り返したい所だ。
既存選手ではやはり不安なのが渡辺俊。その投球フォームの美しさは何も言うことは無いのだが、元々制球力は並レベルなのでキレを失うと昨年のような結果になってしまう。ストレートだけでなく微妙に変化する高速シンカー、独特の軌道を描くカーブというように彼の球は全てキレが生命線。今季は万全の調整を経て本来の調子を取り戻したい。
主要メンバーは05年からほとんど変わり映えしないだけに安定感・信頼性の面では事足りるが、30歳代に突入しているメンバーが増えているのが不安点。高齢化が進み従来のように長いイニングを投げる、という事が出来なくなったら中継ぎでカバーするしかない。薮田・藤田以外あまり目立たなかったのも先発陣が長いイニングを投げてくれるためだったが、そろそろこの面の補填が必要不可欠となってきた。台湾球界から加入したがその期待の一人であり、成瀬が一転不振に陥れば先発も任せる事が出来るぐらいの実績は作っている左腕である。
大量に獲得した新人の中で期待されるのが荻野・江口辺りだろうか。だがリリーフ狙い撃ちで指名しただけあってやはりスケール不足を感じてしまう。恐らくフルには活躍できないと思うので、前年指名した川崎・相原という特徴ある選手の抜擢も考慮しながら頭数を揃えていきたい。今季も小宮山や高木といった「敗戦処理専用機」に頼る事があれば危険信号。薮田・藤田に一定の安定感があるので出来れば他のメンバーにはスケールと特徴ある選手を当てたい所であるが。昨年のように「3人で勝利の方程式を作り上げ、残りは敗戦処理で良い」なんていう発想は時代遅れで、5人なら5人全員で小林雅まで繋げる一本の道を作る事こそ真の全員野球なのではないだろうか。特に「先発が早いイニングで降板したが試合自体はまだ壊れてない」という展開になったらどう継投していくかを考えたい。昨年の王者・日本ハムはそれが非常に巧かったから是非参考にしたい。

三遊間にエースと課題は尽きる事無し 〜東京ヤクルト

主な戦力表



何とかAクラスにたどり着いたが昨年は借金生活。交流戦が無ければあわや最下位という体たらくであった。今季も外国人3人制で乗り切ろうとしている野手だが、いい加減和製大砲を育て上げるという気概が欲しい。宮本で安泰だった内野の要・ショートも年齢的後退が心配な事だし。
ついに雑誌「野球小僧」にも虚弱体質と認定されてしまった投手陣(昨年の10月号)。台湾出身のグライシンガー・希望枠の高市だけではそれを変えることは劣底不可能でこちらも長期的視野が必要である。やりくりの上手さはここ数年のペナントで証明済みだが、人材育成となるとどうか?

<守備力チェック>

捕=米野の送球の乱れは直っているのか。古田も健在だがやはりカギは米野
一=リグスの股関節の柔らかさは凄まじく捕球は安泰か。ゴロ処理は不安だが
二=送球の乱れが目立った田中浩。セカンド一本で改善なるか
三=最も不安なポジション。宮出・飯原をはめ込むという発想がまず理解不能
遊=宮本の衰えが心配。故障も心配
左=ラミレスの曖昧な守備範囲はやはり不安。肩の衰えも隠せず
中=今季はライトも不安で青木の悩みの種は尽きない
右=宮出なら安定度抜群なのに、特にスローイング…

<野手陣>

昨年もヤクルトのチーム構成に対して散々文句を言ってきた感があるが、今季もメンバーは変わってもその問題点は全然変わっていない。どうせ岩村の穴埋めに外国人を埋め込むんだろうなとは思っていたが、まさか今季以降もライトを固める体制に入ろうとしていた宮出をサードコンバートさせてまで外国人野手を3人揃えにかかるとは予想だにしなかった。確かに打撃の素質を買われて02年シーズン中に投手から野手へと転向したのだが、だからといってレギュラーの座に就いた後も便利に扱う事は無いだろう。もし新外国人ガイエルが守備に難のある選手だったら、レフトのラミレスもお粗末だからセンター青木にかかる負担がかなり気にかかる所。外国人獲得の巧さはあっても、近年は外野を見込んで獲得したマーチン・リグスが実は外野守備は不安だらけな選手だという事が来日後に発覚した事だし。
この閉塞感を破るには思い切った抜擢が必要。ガイエルが看板倒れになる事を見越して5番ライト宮出を変えず、6番には巷でその宮出とサードの座を争うと予想されている畠山を入れたが、まだ足りない。大化け候補に名を挙げた選手にこれほど強く化けて欲しいと願うチームは野手では見当たらない。武内はファーストにリグスが控え、野口は故障上がりと不安要素はたくさんあるが、控えにも代走・守備要員の城石・三木、峠を過ぎた感のある代打度会・鈴木と貧弱なメンバーが顔を並べているので、2人には是非その長打力でチームの殻を打ち破って欲しいと願って名を挙げた。ちなみに武内は外野に登録変更との事で、2年目ながら早くも生き残りに必死な様相を見せている。
レギュラーに対しても同様である。宮本の2番復帰、古田PMの正捕手復帰が注目の的となっているが、そうなったら宮本が下位を打ち米野が経験を積んだ昨年が丸々無駄になってしまわないか。クリーンアップが外国人頼みとなるのだからせめて1・2番とセンターラインには将来性と勢いのあるメンバーを揃えて欲しいものである。宮本は打も守もまだ元気だが、高齢化が故障の多さに繋がっているのは古田と同様の選手生活。成績にはまだ見栄えがしても衰えは確実にやってきており、それに気付かず信頼しきってしまうと古田の成績が落ち込み4位に低迷した05年の再現となる。野口や梶本を抜擢するとなると確かに宮本より確実性も守備も欠ける事となるが、宮本自身も入団当初は守備だけに特化した非力な打者であり起用され続けることによって打力をアップさせ名ショートと成り得る事が出来たのである。宮本とはバージョンが逆なショート候補の2人だが、上手くいけば大型ショートとして外国人を凌駕する有力なクリーンアップ候補に成長するかもしれない。折角青木をはじめ米野や田中浩とセンターラインが勢いある若手で固まりつつあるのだからその流れに乗るべきである。若松前監督時代は古田・宮本を始め土橋・城石・鈴木・真中・佐藤といったベテラン陣の踏ん張りでチーム力を保ってきたが、やはりその間に一人でも多くの若手が現れないとこうして現代のチーム構成に重大な影響を及ぼすのである。だから古田には選手よりも監督として自分の価値観を磨いて欲しいし、長期政権を任せるなどその余裕をフロントは与えて欲しいのだ。
昨年は宮本故障の際は主に田中浩がショートを守ったが、守備範囲の面で見るべきものが無くまた肩も強くないのでショートというロングレンジからではスローイングが乱れやすい。そのためどんなに成長しても平均点のショートにしかならないであろうし、やはりセカンド一本で固めた方が適材適所といえる。サードの一角として期待される畠山は打撃だけが魅力の典型的スラッガーで、昨年はファームで長距離より中距離という気持ちの切り替えが出来た年であった。一軍では代打のみで数字も残らなかったが、宮出・飯原ら外野からの転進組に負けたとあっては愚の極み。首脳陣も多少の守備・走塁には目を瞑り、打力を中心に評価してメンバーを選択して欲しい。

<投手陣>

投手陣の支柱的存在であったガトームソンが抜け、先の見えない併用法のデメリットの大きさを思い知らされた形となったヤクルト首脳陣。それにも懲りず再び野手3人:投手2人という外国人のスタンスは変わらず、今季も同様の轍を踏む予感がプンプンである。
完投できないヤクルト先発陣だけにガトームソンの昨年の存在感は9勝という勝ち星を遥かに凌駕する価値があったはずで、リリーフエースである「ロケットボーイズ」石井弘・五十嵐はともにほぼ今季絶望という事で、穴というありきたりな表現よりも喪失感は莫大なものなはずだ。新戦力という観点では韓国球界で活躍したグライシンガーと、東都大学リーグの中心的存在だった高市が挙げられる。ヤクルトの外国人探しの力量はかなりのものがあるので期待したいが、やはり不安要素は3人の外国人野手である。仮に成功したとしてもゴンザレスとの併用で色を失うという結果に成り兼ねない。
希望枠を行使し獲得した高市であるが、彼に投手陣のスケールアップを期待するのはハッキリ言って酷。ピッチングの信念を曲げさせず、常に自分のペースで投げさせてやる配慮が必要である。というのも古田には2年前の自由枠投手・松岡に投球練習でフォークを強要するなど決め球を持たない投手は使えないという概念を持っており、実際のリードもストレートに威力の無い投手に対しては内角攻めよりはスライダー・フォークの多投で凌ぐパターンが多い。決め球という概念を持たず半速球でスイスイと打者を手玉に取るのが長所の高市が古田と馬が合うかどうかは言わなくても解るだろう。とにもかくにも、この高市特有の技巧が「ウイニングショット主義」のプロ野球に通用せず力負けをするとなれば0勝に終わる危険性が高い。逆にこの投球術はプロにも前例が少ないので騙される打者が続発すれば新人王も狙える、というピッチングの安定感とは裏腹に両極端な可能性のピッチャーといえる。
戦力は上積みできても、ガトームソンのような長いイニングを投げてくれるピッチャーという面での補強は皆無だということが解った。当然既存選手に期待するしかない。単純に考えれば05年(チーム完投数たった3)に完投を1ずつ記録している川島・高井・館山にその役割を担わせたいが、川島は昨年のほとんどが肩痛との戦いに明け暮れ、高井・館山はリリーフも務めるなど3人とも期待をかけづらい状況に陥ってしまった。石川は6イニング、藤井・石井一は7イニングがやっとという昨年のピッチングだったが、リリーフに石井弘・五十嵐が控えていた歴史もあり伊東ヘッドコーチ自身が「先発は6〜7回を投げてくれればいい」という概念に捉われていた事を考えれば仕方ないか。タフネスさという観点では松井が挙げられるが、フォーク以外の変化球が未熟で先発でのプランニングに欠ける。やはりヤクルト先発陣は7回が限度、という概念を変えるのは並大抵の事ではないというのが解る。
その先発を支えるリリーフにも不安要素ばかりだが、それに頼るしかないというのが現在のチーム状況。石井弘・五十嵐の故障は大きく、仮に戻ってきても全盛期のような勢いは期待できないはずだ。よって今季中に新たな形を見つけなければならない。
まずはリリーフエースの高津。最晩年ともいえる年齢だが昨年は急場凌ぎにも拘わらず防御率2点台と安定感を発揮した。だがそれでもシンカーの威力は全盛期と程遠く、アメリカで多用していたスローカーブとこれまでの実績による「顔」で凌いでいた感が強い。39歳という年齢は一度崩れると復活の難しい立場であり、一シーズンフルにクローザーを務められる力が残っているとは思えない。彼をサポートするセットアッパーの一番手も同年齢の木田であり、クリーンアップ・先発・リリーフ何処をとっても「つぎはぎ」「急場凌ぎ」というチーム状態。本格的にメスが入れられる日は永遠と来ないのでは、とも思えてしまう。
木田であるが、サイドスロー気味にモデルチェンジしてもフォークの落差は相変わらずで、後輩である館山・花田といった面々も昨年はフォークがよく落ちており指導という面でも貴重な戦力となっている。オールスター出場という華々しい復活も遂げたのだが、中盤以降フォークの投げ損ないが目立っていたので今季は大事なところで起用するには勇気が要るだろう。花田はまだ中堅だがストレートがいかにもボリューム不足で、右打者の内角にシュートを多投しながら、最後は木田直伝のフォークを落として凌ぐというスタイル。他にも松井・河端など古田のポリシー通りにフォークを決め球に持つピッチャーが多いが、全盛期の五十嵐・石井弘のような圧倒的な球威を持つ選手も居ないのでせめてバリエーションが欲しい。そんな実情もあり、サイドスローのルーキー西崎や技巧派左腕の丸山貴は意外と早期に一軍定着を果たすかもしれない。
こんなチーム状態だからなのか、高卒ルーキー増渕の株が急上昇している。最速150キロとも言われるストレートで首脳陣に猛アピールしており、現有戦力の勢いが感じられない現在では1年目からの定着があっても不思議でないとまで思わされる。フォームがやや特殊なので長いイニングを投げなければならない先発よりもリリーフの方に適性を感じる。ロケットボーイズの穴を埋められるとすればこの増渕以外に考えられず、一気にクローザー定着という事もあるかも。

戦力を固めた事が逆に不安 〜福岡ソフトバンク

主な戦力表



野手・投手とも積極的な補強で優勝候補と言われるが、この補強が不安点も生み出している。普通に起用していては多村・小久保が無傷で1年過ごせるとは考えづらいし、この補強によって上昇機運にあった若手の成長も止まってしまうかもしれない。そう考えていくと圧倒的なペナントとはいかないはずである。
先発をスケールある投手で6枚揃える事に成功した投手陣も同じで、むしろ大切なのはその先の彼らを起用方法である。昨年は森脇監督代行が指揮を執った試合が多かったが、形式どおりの起用が目立ちスケールある投手陣が生きなかったように思う。王監督の健康面に不安がある現状では当然代行の可能性が高く、そうなったらシーズン1位の座に就くのはかなり苦労するはずである。

<守備力チェック>

捕=山崎・的場ともに肩力が物足りず。当然新人・高谷にもチャンスはある
一=松中はここ2年間指名代打ばかり。田上が守ることも頭に入れなければならない
二=堅実だがオーラのない本間に本多がどこまで対抗できるか
三=小久保の守備力は健在だが故障の事を考えると無理はさせられず
遊=不安要素が多い内野だがここは川崎で安泰
左=恐らくは多村が就くであろう。離脱しないことを祈るだけである
中=大村で不動。ただ肩が強くないのでひょっとしたら多村になるかも
右=柴原は打力オンリーになっている印象。アダム→守備固めに城所といったスタンスか

<野手陣>

強力打線から一転、主軸が徹底マークされて一気に得点力が低下した昨年。この梃入れをせんと3年前に巨人にトレードされた小久保をFA移籍という形で取り戻し、「松坂に続く甲子園の怪物」であった寺原を放出してまで横浜・多村をトレードで獲得した。ズレータの退団は防げなかったが新外国人のアダム・ブキャナンには日本球界の色が付いていない新参者だけに大化けの期待は持てる。
問題は首脳陣が、補強した面々について「不安要素もあるから彼らを信頼しきるのは止そう」という意識を抱けるかどうか。多村・小久保は昨年揃って場数が落ち込み、新外国人二人は大当たりの可能性もあるがやはり外れた際の事を考えなければならない。僕はあえて「多村が怪我する」「外国人のどちらかが外れる」と想定してオーダーを組んでみたが、この場合は松中・小久保以降の打撃の脆弱さは否めずという事になるので、意外な勝負強さを持つ山崎を7番に上げ、8・9番は上位への繋ぎの役割を果たしそうな人選をしてみた。城所はヒット量産型で外野の間を抜く打球に持ち味ある典型的な先頭打者タイプだが、決め打ちをし過ぎているのか三振がやたら多いのが玉に傷(昨年は69打数で28個という多さ)。本多は忘れた頃のオーバーフェンスもあり、城所同様俊足で三塁打も期待でき投手にとっては侮れない存在。この未来の1・2番とも取れる若手2人が作ったチャンスを、本来の1・2番コンビである大村・川崎が返すという形で小久保・松中にかかる重圧を軽くしたい所。ちなみに大村の昨年の得点圏打率はチームトップだった。外国人2人とも外れという最悪の事態が起こったら、レフトに柴原が入る。この形だと打線はともかく外野守備は城所・大村・柴原と完璧に近い状態を保てることだろう。
実際はそんな僕の理想通りにいかない物であるが、予想オーダーに示したような首脳陣の理想の形にスンナリ収まるとはとても思えない。多村の選手としての能力は一流でとにかく故障しない事を願われるが、この選手はどうやっても故障を発生させる選手なのである。週刊ベースボールでは「ほとんどが全力プレーの中での故障だから仕方ない」と気丈にインタビューしていたが、横浜時代の故障暦を振り返ると「ポスター撮影中にジャンプ→着地で捻挫」「試合前のキャッチボールの最中にぎっくり腰」「玄関で靴を履こうとしてぎっくり腰」「ストライキでの緊急握手会で握手のし過ぎで腱鞘炎」「耳の腫れ物が大きくなって大事をとって欠場」「荷物を肩にかけたままサインに応えて肩痛」「交通事故によるエアバックの衝撃で打撲」…これの何処が全力プレーの結果なのだろうか多村に聞いてみたい。(詳しくは「多村 スペランカー」で検索したらいやと言うほど見つかるはず)
話は脱線したが、この多村に関してはパリーグに移ったこともあり「指名代打制があるから多少の無理は効く」と思っている方が多い事だろう。だがここで問題になるのが、多村自身「僕は天性のホームランバッターではない」といった旨のコメントをしている事。これが何を意味するのかというと、多村は守備から全体のリズムを作っていく選手、という事なのではないだろうか。打撃だけでなく守備も強肩・守備範囲の広さ・ファインプレーの頻度とその後の故障の頻度どれをとっても超一流で、彼を大成させた横浜時代の山下監督は03年シーズン前「守備で期待している」と多村に声をかけた程。これで結果を出そうという力みが消えた多村はこの年助走をかけ、04年は3割越え・40本塁打と一流選手の仲間入りを果たすのである。だから些細な故障などで指名代打に就かせようとすれば途端に打てなくなるのでは、という危惧もしなければならない。
健康面の問題もあり王監督がこれから何年も指揮を執り続けるという事は考えづらいので、後任に道を残しておくという事も勝つのと同じぐらい重要となってくる。3年後も万全なのはショート川崎ぐらいなもので、長打力に衰えが見られる松中・小久保の後継者、アスリートタイプの外野手大村・柴原の後継者、それ以前に形を得ないキャッチャー・セカンドを誰に任せるか…という風に、巨大戦力であってもやらなければならない事は無数に存在する。小久保・多村が加わらなければ大化け候補には仲澤・井手・江川辺りの名を連ねたかったが、今となっては2〜3年後を待つしかない状況だ。05年ドラフトの希望枠・松田を16人枠に入れたものの、「控えは確実性を重視」の下稲嶺吉本の方が入る可能性も高い。
ともかく予想メンバーが額面どおりに働けば打線も守備も強力である。だが不安はどうしても隠せない。首脳陣も王の健康がやはり不安要素であり、一つ歯車が狂えばチーム崩壊という事にもなりかねない。その際は松中のリーダーシップに期待するしかないだろう。故障がちながら走塁では常に全力疾走を怠らない若手の手本であり、鈍足と言われながらも昨年は一塁駆け抜け4.2秒台をコンスタントに出すまでに足の状態は上がっている。元チームリーダー・小久保が手を下す必要の無い位、今季も松中には野手陣を引っ張って貰いたい。

<投手陣>

野手同様に大幅補強を図った。斉藤和・和田・新垣・杉内の先発4本柱は健在で、昨年は5・6番手の先発が泣き所となっただけに、ヤクルトとガトームソンとの交渉が決裂するや否やすかさず獲得。ガトームソンのヤクルトへの要求は2年7億であったが、ソフトバンクとの契約では2年2.5億程度の額に収まったためゴンザレスとの併用によっぽど不信感を抱いていたのだろう。変則ローテーションの中防御率2点台・ゲームメイク率100%という完璧な内容を残し、交流戦でも楽天戦でノーヒットノーランしているようにリーグの違いにも対応できるだろう。
これに加えてドラフト希望枠で大学球界ナンバー1左腕・大隣を加え、先発6枚全員をビッグスケールで固める事に成功した今オフ。だがここにフロントひいては王以下首脳陣の心の油断がある。仮に杉内が不調を持ち越したり、ガトームソン・大隣がつまずいて戦力になれなかったりしたらどう対処するか、という部分で非常に不安を覚えている。昨年4本柱に次いで先発機会の多かった寺原をトレードに出したのもその分子の一つで、将来「怪物」となるのを見込んでドラフト1巡目で獲得したにも拘らずその成長過程を見届けることなく5年で退団させるその姿勢にも不安を抱いてならないのである。倉野・星野・田之上はとうにピークを過ぎているし、寺原と同期である神内にしても、メンタル面で「自分もゆくゆくは放出されるのでは」という思いを背負いながら先発・リリーフの二刀流をこなさなければならない。折角高橋秀や育成枠から這い上がってきた西山の抜擢など「金に物をいわせるだけじゃない」というイメージが大きくなっていたからこのオフには相当がっかりきた。
さて先発スタッフであるが、エース斉藤和は二段モーション規制も乗り越えてすっかり充実。若き頃はルーズショルダーに悩まされ苦しんだだけに、30歳に到達する年齢も気にならない。秋季キャンプで肩に炎症を発したとの事だが、その辺のケアの経験は積んでいるので問題ないだろう。結婚とワクチン支援という責任感を背に成績を上昇させた和田も無問題。速球派でないので今季も存分に安定感を発揮する事だろう。不安要素があるとすれば3番手以降。1シーズン内で浮き沈みが激しい新垣は和田と対照的なパワーピッチャー。昨年は前半こそ完投を続ける快進撃を魅せたが次第に調子を落とし、終わってみれば和田に成績で抜かされてしまう結果となった。特に最後の登板となった9月24日オリックス戦では7回にスタミナが切れたのか一挙5失点を喫しチームも3位に留まってしまった。縦のスライダーは言うまでも無く万全なだけに、不振に陥ったときに他の変化球を駆使して打ち取るという技術も身に付けてもらいたい。杉内はストレートの披打率が悪化し全体的にリズムを崩す結果となった。あの極限までに球持ちの長いフォームから放たれるストレートをもう一度復活させたい。MAX152キロ左腕・大隣は4年春こそ不調だったが秋に復活。この上昇機運をプロに持ち込めるかが1年目の活躍のカギである。ガトームソンは一にも二にも気持ちの問題。オフの騒動だけでなく、「ヤクルトのエース」から「ソフトバンクの先発の5番手」にまで役割は下がる訳だから、斉藤和・和田らの活躍を見ても焦らず自分のペースで投げられるかどうかが重要だろう。
寺原だけでなく中継ぎの吉武をも犠牲とした形になったオフの補強策。藤岡柳瀬の成長を見込んでプロテクトから外したのだろうが、何度も言うようにその油断が命取りとなる。
そのリリーフ陣。クローザーは馬原で安泰だが、彼以外に縦の変化球で勝負出来る人材が不足している。柳瀬の他は故障上がりの山田・山村ぐらいしか見当たらないのではないか。神内は世間一般的な決め球であるスライダー・フォークよりもカーブが冴えるピッチャーなので先発かロングリリーフで使いたいが、左では三瀬が05年中盤以降ピリッとせず、篠原はスタミナに不安がありショートリリーフにしか使えない。藤岡が疲労を持ち越し不調に陥れば一気に崩壊の危険性もある危なっかしいスタッフである。今のところはシンカー取得を目指すなど視界は明るいがシーズンインしたらどうなるかは解らない。もし2年目のジンクスに嵌れば彼と同タイプの竹岡が埋める事となりそうだが、折を見てルーキー森福ニトコースキーも抜擢して陣容を整えたい。特に新外国人ニトコースキーは、野手のアダムとともに球団初の海外スカウトによって入団した助っ人。高額を叩いては失敗を繰り返した過去2年の外国人戦略から脱皮できるか、しっかり見届けたいと思う。

数年来のスカウトの真価を問う 〜阪神

主な戦力表



野手の高齢化・投手のエース退団という二つのマイナス要素を背負ってしまい正念場。主力が底力を発揮すれば野手は万全なのだが踏ん張りが利かない年齢に突入している選手が多いのも事実。おまけに手薄にも程がある控え陣は何とかならないものか?
投手はここ数年来続けている即戦力投手の指名もあり「井川の穴は若手で埋めれば良い」という空気だが、その指名選手自体に問題があるので過大な評価がしにくいのが現実であり楽観視している余裕は無いはず。筒井・岩田・金村・小嶋を化けさせる指導者は現れるのか?

<守備力チェック>

捕=矢野の盗塁阻止は見事なのだが今季もそれを保てるかどうか
一=シーツの捕球能力は重要かつ貴重。他の面子は一皮向けるべき
二=藤本・関本の併用は健在か。藤本の方に味がある
三=今岡の動きの悪さはよく聞く話。目をつぶれる位の価値を取り戻せるかの方が大事
遊=失策が膨らんでしまった鳥谷。ファーストが硬いのだから臆することなかれ
左=金本は乱れるシーズンとそうで無いシーズンがあり読みづらい。守備範囲は狭いが
中=肩の劣化が目立った赤星。走塁だけでなくこの分野も復活させなければならない
右=肩が戻った濱中だが逆に安定性に欠ける結果に。改善求む

<野手編>

05年こそ打って打ちまくる打線が爆発、強力リリーフ陣とマッチして優勝を果たしたものの昨年は一気に得点数が100以上減少する羽目になってしまった。そのため関本が2番に入り送りバントを活用する戦略に切り替えたのが後半戦。
成績を上げたのがこの関本以外では濱中・シーツ・鳥谷の4人。矢野がイーブンという感じで後の赤星・藤本・金本・今岡がダウン。とりわけ05年の主役であった赤星・金本・今岡のダウンはモロ得点能力に支障をきたした格好となった。
中でも今岡の不振は最も酷く、コアなファンには「最悪時代の再来」と言われたほど。故障も原因の一つだったが、得意としていたインコースの捌きが全く冴えなかった。とにかく内角球を引っ掻けてポップフライか内野ゴロ併殺、というのが恒例行事で、守備でも狭く曖昧な守備範囲で足を引っ張った。プレースタイルを見ていると思わず「金本より年喰っているのではないか」という嘆きが出てしまう程であり、一応近年の顔に免じて予想スタメンには入れたが精彩を取り戻せるのか疑問。
この今岡含め、金本・矢野が耐用の限界に差し掛かったらどうするか、という観点でオーダーを考えてみた。赤星の機動力の復調にも信頼を寄せづらい状況だから2番・関本は変わらないのではないか。もう一人のセカンド藤本は小技タイプにも拘らず淡白なバッティングが目立ちとてもじゃないが2番は任せられないだろう。4番には和製大砲として蘇った濱中。03年星野前監督に潰されかけただけにどうなるかと思ったが、昨年の活躍を見てとりあえずは安心した。初の100打点到達といきたい今季である。打線の強さを考えれば7番藤本が障害となりそうだが、ここに喜田辺りがサードの水が合って覚醒すれば面白くなりそうだ。まあ現実的には岡田監督のベテラン偏重起用も考慮してシーツがサードに入りファーストは高橋光か…などと考えてしまうのだが。矢野衰退を想定してのキャッチャーはとりあえず過去2年の実績からして浅井。だが浅井は01年ドラフトの自由枠選手であり、彼の成長を信頼するなら後のドラフトでも上・中位で岡崎橋本良・清水を獲る必要があったのかとフロントに問い詰めたい。
予想オーダーに並べたメンバーは、額面どおりの働きをすれば間違いなくリーグ屈指の打線となる。だが2〜3年したら確実に崩れてしまう、いや既にその予兆が見え始めている内部がスカスカの城に何を見出せというのだろう。岡田の監督評価は世間体では高い方だが、こうして来るべき数年後の将来に全く備えられていないのだから僕の中では低評価せざるを得ない。この城が崩れ去ったら上記で名を挙げた喜田・浅井はもちろん林・赤松・桜井・藤原・坂・狩野・岡崎といった選手がレギュラーを争いそうだが、一軍ではほぼゼロからスタートする彼らにいきなり赤星や濱中・矢野級の活躍をしろといっても無理がある。だから桧山・片岡・野口らの一軍に拘らず、控えでもいいから期待の新星を数人ベンチに入れておくという配慮が必要であったが今更嘆いても始まらない。投手陣もぐら付いており首脳陣は確実な戦力で固めたい所だが、新戦力が2人でも3人でも出て来なければ今季は良くても来年以降の暗黒時代の再来は時間の問題だ。
シーツという捕球の鬼がファーストにデンと構えており安心と思えた内野守備だが、鳥谷の21失策というのは機敏さ・強肩を差し引いても酷くないか。関本・藤本ともにセカンド守備は無難だが、センター赤星のスローイングの衰退もあり、現実にはセンターラインはベテラン矢野が支えているというのが適切か。特に心配なのが機動力も冴えを失いつつある赤星で、既に30歳代に突入している事もあり筋力面での増強は難しいかもしれないが、1番センター赤星抜きの阪神野手陣は考えられないので意地を見せて欲しい。

<投手陣>

エースであった井川が抜け、当然その穴埋めが第一課題となる。だがとりあえずそれはこっちに置いといて、まずは磐石と思われているリリーフ陣から語りたい。
阪神リリーフ陣といえば当然「JFK」が真っ先に頭に浮かぶが、久保田の先発転向プランもありほぼ解体が濃厚。この穴はダーウィンか、メジャーでクローザーとしてある程度の数字が残っているジャンで埋めれば良いや、なんて考えているのだろうがこの外国人への依存の高さがまず不安。野手の不成功続きと比べ投手はウィリアムスはじめメイ・ハンセル・カーライル・ムーア・バルデス・リガンと失敗が少ない事で全般の信頼を寄せているのだろうが、ダーウィンは昨年後半の失速があるしジャンは先発も含めた調整をしているとの事で未知数。
不安点としては、今季日本球界5年目となるウィリアムスに対しても抱いている。04年に多少乱れたという程度でリリーフでブレ無く活躍を続けているのだが、外国人に関しては日本での耐用年数が全体的に短い。近年長らく在籍した選手はというと以下の通り。
 グロス     5年(4)     ミラバル   6年(5)
 ブロス     5年(3)     ミンチー   7年(5)
 パウエル   6年(5・現役)  ドミンゴ   5年(3)
 シコースキー 5年(4)     ガルベス   5年(4)
 ギャラード  5年(4)

 ※()内は主戦力だった年数

郭泰源という13年もの長期間選手が現れるのは極めて稀で、普通の感覚なら5〜6年がやっとである。しかもリリーフタイプの名前が少なく、シコースキーとギャラードだけ。上記の中で退団したシーズンにもきっちり仕事を果たしたのはシコースキー1人。つまりウィリアムスまでが成績不振に陥る可能性も否定できないというのが今季。
藤川・久保田以外の日本人リリーフに安定感のある選手が皆無なのも気掛かりだ。05年の好成績者は橋本健・江草・桟原だが、昨年は総入れ替えもあり吉野・相木ぐらいのもので、スケールも場数も物足りない。こうして見ると松坂が抜けた西武同様、先発よりもリリーフの整備が重要な課題に思えてくる。先発経験はあるものの緩急に欠けゲームプランニング能力が未知数な久保田は先発よりも中継ぎに留める、先発リリーフどっちつかずの江草・能見辺りの適正を見極める、といった作業が首脳陣に求められる事だろう。
思えば99年以降のドラフトでは毎年枠いっぱい逆指名を行使している阪神。「逆指名=投手偏重」となっていくのが通例であり、阪神もその流れの通り14人のうち野手は的場(既に退団)・浅井・鳥谷・岡崎の3人だけ。それだけに井川の流出はあっても投手陣はもっと隆盛していたっておかしくない。安藤が主戦力、杉山江草・能見は何とか一軍スタッフの位置に届いているが、その他5人が出て来ないというのは不満。(いや伊達はもう去ってるけどさ)逆指名とはチームの柱になってもらいたい選手を狙い撃ちする制度のはずである。
だから結果の出ていない太陽・筒井・岩田にルーキー小嶋はもちろんの事、中位で指名してきた中村泰・三東・桟原・橋本健・金村辺りまで視野に入れて競争を煽ってもらいたい。当然彼らが伸び悩めば「野手が高齢化しているにも拘らず投手ばかり採って、おまけに失敗までして」などとスカウトの責任は二重にも三重にもなるのだからまさに阪神は今が正念場。
先発について述べるスペースが失われた感があるが、これまでの話を延長すれば大体理解して貰えるだろう。福原・安藤・杉山に上記の多数の有望株が合わされば新外国人ボーグルソン・ジャンに頼らなくても埋める事は可能だ。福原はローテ入り以降隔年でカーブのキレが良かったり悪かったりしておりそれが成績にも現れている。今季は悪い方にあたるのが不安要素。それでもエース候補の第一は福原以外あり得ないので気合で乗り越えて欲しい。年齢的にもピッチングスタイルでも大ベテランと形容するのがピッタリな下柳。懸念される衰えは速球派でも完投型でも無いので今季も自身のペースでひたすら投げ抜ければおのずと好結果は付いてくるに違いない。問題は井川が抜けた事で「自分が先発を引っ張らなければならない」という思いが沸いて来た時。もしそうなればペースを乱してしまう事は当然考えられる訳で、やはり最後尾から投手陣全体を押していくという立場で老獪なピッチングを続けてもらいたいものである。

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